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第二の銃声/A.バークリーThe Second Shot/A.Berkeley |
1930年発表 西崎 憲訳 世界探偵小説全集2(国書刊行会) |
「よくもまあ、ぬけぬけと……」というのが正直な感想です。確かに手記の冒頭には
この作品で使われている“視点人物(記述者)=犯人”のトリックは非常によくできています。特に、殺人劇という趣向が巧みに利用されているところがポイントでしょう。ピンカートンは堂々と目撃者の前でエリックを撃っているわけで、“視点人物=犯人”トリックにありがちな、犯行場面だけがぼかした書き方のために浮き上がってしまうという弱点を免れています。もちろん、空包と実包のすり替えなど、まったく書かれていない作業もあるわけですが、
そもそも、ピンカートンに容疑がかかったこと自体、かなり不運です。彼の計画では、“第一の銃声”がエリックの命を奪ったものだと見せかけてアリバイを確保する予定だったのですが、ヒルヤードの気まぐれによって“第二の銃声”が生じてしまい、しかもそちらがエリックを殺した時のものだと思われてしまったのですから。ピンカートンは自分でも正直に 手記の最後の部分(エピローグの直前)には、ピンカートンの筋の通った考え方がよく表れていると思います。せっかく容疑が晴れたにもかかわらず、シェリンガムがエルザを真犯人と考えていることを知ると、思わず口を滑らせてしまいそうになっています。罪を犯したことには違いありませんが、個人的にはやはり好感の持てる人物といわざるを得ません。 2001.11.17読了 |
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