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4000年のアリバイ回廊/柄刀 一 |
1999年発表 光文社文庫 つ12-2(光文社) |
現代の事件の、死体移動トリックは非常によくできていると思います。最終的に、錘を結びつけて深海に沈められていることで、どうしても死体の移動を疑いにくい状況となっているところが秀逸です。また、死体の頭部をビニール袋で包むという手法も周到ですし、それによって死体の不可解さが増しているところもポイントです。さらに、犯人の巧妙な計画にもかかわらず、予期せぬ海流の状態によって、まったく逆方向に死体が流されてしまったというのも印象的です。 ただ、殺人の動機については、個人的にはやや釈然としないものもあります。もちろん、最終的には被害者から江本母娘を狙った脅迫を受けたからということになってはいますが、その前にある、胎盤を実験に使用したという事実が、それほどおぞましいものには思えないのです。確かに普通ではないとは思いますし、(目的を偽っていたわけですから)裏切られたと感じるのも当然なのかもしれませんが、“自分の息子の誕生を不当に穢された”というのは行き過ぎではないかと思うのですが……。 *******
遺跡の方の謎では、DNA鑑定による親子関係が秀逸です。真相を明かされてみれば双子しかあり得ないわけですが、片割れである“鏃の男”のDNA鑑定が困難だったこともあって、“頼朝公、三歳のみぎりの頭蓋骨”(←すみません、わかる人だけわかって下さい)を彷彿とさせる不可解な謎が作り出されています。ただ、その他については、細々としたネタの積み重ねという感じで、少々わかりにくくなっているのが難点といえるかもしれません。 2003.02.25読了 |
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