死の舞踏/H.マクロイ
Dance of Death/H.McCloy
1938年発表 板垣節子訳 論創海外ミステリ51(論創社)
ウィリング博士が犯人を見抜くきっかけとなっている、“Katherine”と“Catharine”という綴り間違いについては、日本語の読者にとってはアンフェアになってしまっているのが残念です。もちろん、そこだけ綴りを表記するようにすれば見え見えになってしまうので、致し方ないのは理解できるのですが……。
その間違いによって浮かび上がるミセス・ジョウィットとスベルティスの結びつきが、犯行手段だけでなく意外な動機にもつながっているところが非常に面白く感じられるだけに、日本語ではわかりにくくなっているのがもったいないところです。もちろん、ジェーン・ジョウィットの死因が明らかになった時点(298頁)で動機は明らかですが、若干唐突に感じられるのは否めません。
犯行手段に関しては、臭い消しの小瓶という小道具がうまく使われている(そしてそれを持ち歩くのに自然な状況が作り出されている)ところもさることながら、キティのマラリアとパスクーレイのモルヒネ中毒がうまく絡めてあるのが面白いと思います。何より、被害者であるキティ自身が大いに宣伝していた薬の過剰摂取という状況設定がお見事です。
2006.12.24読了