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分解された男/A.ベスター

The Demolished Man/A.Bester

1953年発表 沼沢洽治訳 創元SF文庫(東京創元社)

 何の気なしに読み飛ばしていましたが、ライクとド・コートニーとの連絡に使われた暗号表が一つの伏線になっています。“「WWHG、《提案拒否》拒否! 拒否だと! 案の定だ!」”というライクの台詞にすっかり騙されてしまいましたが、暗号表によると“WWHG”は《提案受諾》ですから、見かけ上ライクがド・コートニーを殺害する動機はなくなってしまい、パウエルもライクを検挙できなくなってしまいます。そしてさらにこのことがライクの心の奥に秘められた真の動機を掘り出す鍵となっているのです。

 “顔のない男”の正体については早い段階で見当がつきましたが、中盤以降ライクの中にいる“顔のない男”が暴走してしまうところが面白いと思います。殺人罪で罰せられるおそれがなくなったために、自らの“良心”に殺されそうになってしまうというのは皮肉です。

2001.10.05読了

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