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五人対賭博場/J.フィニィ

5 Against The House/J.Finney

1954年発表 伊東守男訳 ハヤカワ・ミステリ920(早川書房)

 まず、襲撃計画以前に現地への移動手段からしっかりと考えられているのには感心しました。危険の少ない、よく練られた計画だと思います。しかし、そこまで万全を期していながら、子供の落書きから犯行がばれることになってしまったのは、不運としかいいようがありません。

 肝心の襲撃計画は、実に意表を突いたものです。金庫室に至る二つのドアを通り抜ける手段が難関であったわけですが、手押車を利用することで、金庫室に入らずに金を奪うという逆転の発想はすばらしいと思います。特に、手押車の中に仲間が隠れていると思い込ませるというトリックは秀逸です。

 奪った金は小切手ばかりだったという犯行の結果は皮肉なものでしたが、これが幸いして告訴されずにすんだという結末はよくできていると思います。ラストの、ゲームを終えて一つ成長した主人公たちの姿は、爽やかさすら感じさせてくれます。ただ、ブリック一人にだけ責めを負わせるような展開にはやや不満も残りましたが。

2001.02.21読了

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