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羊の秘/霞 流一

2005年発表 ノン・ノベル(祥伝社)

 お題である“羊”の見立ては、残念ながらかなり苦しいといわざるを得ません。もちろん、第二の殺人の金毛の羊の見立てはすぐにわかりました(むしろ、これが出てくるまで、当サイトの名称に“羊”が含まれていることをすっかり忘れていたのが、我ながら情けないところです)。が、第一の殺人の羊ならぬ未は少々わかりにくい上に、紙による呪術の方が目立ってしまっているのが難点。さらに第三の殺人の火星→牡羊座になると、もはやこじつけとしかいえません。

 しかし、犯人の目的はあくまでも羊と絡めた呪術の儀式を行うことであって、その意図を他人に伝えるためのものではないのですから、犯人としてはこじつけめいたわかりにくい見立てでも一向にかまわないのかもしれません。逆に謎解き役にとっては、“羊”というキーワードがわかりさえすれば、それを手がかりに見立ての内容を見抜くことができるともいえます。何だか本末転倒のようにも思えますが、呪術の儀式という性質上、これもありでしょう。

 第二の殺人の鏡のトリックは、残念ながら不可能。氷の表面の滑らかさは鏡面にはほど遠く、まともな鏡像は映りません。ぼんやりとした影が見えれば上出来という程度だと思います。

 今回の事件の真相は非常に陰惨なものになっていて、途中でやや辟易としたのですが、中盤以降に登場する秘枕がこの陰惨なプロットとうまく結びついて、大きな効果を上げています。特にラストシーンなどは、ホラーの域に達しているといっても過言ではありません。霞流一の新境地といえるのではないでしょうか。

2005.02.10読了

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