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呪い亀/霞 流一

2003年発表 ミステリー・リーグ(原書房)

 まず最初の殺人、“亀の甲羅にまたがった死体”ですが、“剥製から目をそらすために亀の見立てを行う”というのは非常に無理があると思います。問題となる大西の剥製は犯人自身が持ち去るわけですし、被害者が記録を残しているとも思えないので、わざわざ“剥製から目をそらす”必要はまったくないのではないでしょうか。

 次の“疾走する老人の消失”については、岸を犯人とする最初の解決で説明された“氷の滑り台”はあまりにも無茶だと思いましたが(強度や高さに問題があるのではないでしょうか)、“真の解決”には安心しました。

 “亀の密室”はいかにも霞流一好みの豪快な“バカトリック”で、なかなか面白いと思いますが、以前の作品((以下伏せ字)『ミステリークラブ』(ここまで))で使われたものと似たような印象になってしまっているところがやや気になります。

 犯人を指摘する場面はよくできています。霞流一お得意の、細かい手がかりの組合せで容疑者を絞り込んでいく手順も魅力的ですが、手がかりの解釈の仕方によって多重解決の構図を作り出しているところが印象的です。

2003.01.26読了

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