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蹴りたい田中/田中啓文

2004年発表 ハヤカワ文庫JA762(早川書房)

 一部の作品のみ。

「地球最大の決戦 終末怪獣エビラビラ登場」
 ウルトラマンをハードSFとして描いた(一応伏せ字)小林泰三『AΩ』(ここまで)に対して、あくまでも特撮としてのウルトラマンにこだわるかのような、ぬけぬけとしたアイデアが笑えます。
 主人公二人の名前にルビがふってなかったので、最後のダジャレにかかわってくるのではないかとは思っていたのですが、ネタは予想外でした。

「トリフィドの日」
 トリュフが登場した時点で、“トリュフ・イド”というダジャレは予想できたのですが、“飛雄馬のイド”は読めませんでした。“星”という名字ならば確かに“星飛雄馬”の方が知名度が高いのでしょうが、製薬会社の二代目というプロフィールから“星新一”の方を思い浮かべてしまうSFファンも多いでしょう。しかし、このようなミスディレクションを仕掛けつつ、スパルタ教育の父親や、友人の“淳三郎”(→“伴”(Google検索: 伴淳三郎)→“宙太”(Google 検索: 伴宙太))といった手がかりが提示されているのが心憎いところです。
 そしてもう一つ、“ダン”・“アキラ”(→アギラ)・“三級”(→ミクラス)といったネーミングからも、MIBがウルトラセブンとカプセル怪獣(このページの下の方を参照)のパロディであることは明らかなのですが、“ウインダム”にはしてやられました。何といっても、子供の頃、『トリフィドの日』のジュヴナイルを読んだ時に“カプセル怪獣みたいな名前の作者だな……”と思ったのを、自分でもすっかり忘れてしまっていたのが悔やまれます。

「やまだ道 耶麻霊サキの青春」
 いうまでもないとは思いますが、「貴様だ、マヤ!」は逆から読みましょう。それから、題名にもなっているサキの名字は、当然“やまだま”ですね。

「赤い家」
 数多くの小ネタが盛り込まれていますが、“マイケル・ブレッ蚊”(→マイケル・ブレッカー(Google検索: マイケル・ブレッカー))には、思わずニヤリとさせられました(ステップス・アヘッドのこのアルバムだけしか持っていませんが……)。
 “蚊・サンドラ・クロス”というダイイングメッセージですが、かおりの説明によれば、アミラは気絶したまま殺されたはずで、ダイイングメッセージを残せるはずがありません。もっとも、一ノ谷真理子のダイイングメッセージによって、現場にアカイエカがいたことが示されているので、さほど問題はないかもしれませんが。

「地獄八景獣人戯{じごくばっけいけものびとのたわむれ}
 “ヴァーミリオン・三途”(→J.G.バラード『ヴァーミリオン・サンズ』)と“ディオキシリボ・カクサン”には笑いましたが、最後のモロー博士ネタはかなり無理があると思います。

「蹴りたい田中」
 “エビス・フデスズリ”という名前はかなり無茶だと思いましたが、“父親は高名な書道家で”(293頁)という伏線が……。

「吐仏花ン惑星 永遠の森田健作」
 一番笑ったのは“猿合奏会”ですが、“甲冑に名前が書いてあったのだ”という小ネタも好きです。

2004.06.11読了

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