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マリオネット症候群/乾くるみ

2001年発表 徳間デュアル文庫い3-1(徳間書店)

 まず、森川先輩殺し、“毒入りチョコレート事件”の犯人ですが、A.クリスティの有名な作品((以下伏せ字)『アクロイド殺し』(ここまで))の応用になっています。“視点人物=犯人”という真相を自然な形で実現した先行例としては岡嶋二人の某作品((以下伏せ字)『そして扉が閉ざされた』(ここまで))があり、この作品でも同じようなパターンが使われています。しかし、岡嶋二人の作品ではその真相がゴールだったのに対し、この作品ではスタートになっているところが特徴です。つまり、被害者の意識が犯人の体に乗り移っているという特殊な設定のために、その真相によって被害者自身が窮地に陥ることになってしまうのです。森川先輩にはこの窮地を脱する余裕はありませんでしたが、次に殺されて同じ立場に陥った森川真紀の解決策は見事です(残念ながら完璧ではありませんでしたが)。

 乗り移りという設定に関しては、やはり“ママ”が“パパ”だったというのが最も衝撃的です。亡くなった双子の兄に関する真相などは予想できる範囲内といっていいでしょう。あとは、最後の殺人がやや唐突に感じられるところが残念です。

2001.11.13読了

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