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完全脱獄/J.フィニイThe House of Numbers/J.Finney |
1956年発表 宇野輝雄訳 ハヤカワ・ミステリ678(早川書房) |
この作品で描かれているサン・クエンティン刑務所には、外部からの侵入者に対してはさほど注意を払っておらず、また囚人が多すぎるために人数が合っている限りは本格的に警備陣を動かさないという弱点があったわけで、アーニイの脱獄計画はこの弱点を的確に突いた見事なものです。もちろんこの計画は、多少容貌など似たところのある弟のベンの協力があってこそのもので、特に終盤の車の乗っ取りなどは非常によくできたミスディレクションといえるでしょう。 また、ストーリー展開において、ベンとルースの隣家に住む看守のノヴァが非常に効果的に使われています。まず、ベンとルースが計画を実行する上で大きなプレッシャーとなっているだけでなく、刑務所内でベンと出会う場面は非常にスリリングなものとなっています。さらに終盤、計画の大きな障害として彼らの前に立ちはだかった上、密告電話の主ではないかと疑われることで最後の真相を隠蔽するのにも一役買っています。 そして、密告電話の主がアーニイだったという最後の真相は、それまでの彼の言動から十分納得のいくものですし、ラストのベンの選択も致し方ないことだと思います。 2001.03.25読了 |
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