月が昇るとき/G.ミッチェル
The Rising of the Moon/G.Mitchell
1945年発表 好野理恵訳 晶文社ミステリ(晶文社)
事件の真相を知り、真犯人であるミセス・コッカートンを罠にかけようとしながら、最後の最後になって警告を発したサイモン少年。それに対して、“イネスさん、あなたって紳士ですわ”
(346頁)というとびきり素敵な台詞を残したミセス・コッカートン。このやり取りには、強く心を動かされました。
事件は少年たちにとって、日常から逸脱した非日常の“冒険”だったわけですが、狂気を帯びたミセス・コッカートンにとってもまた同様に、日常とは乖離した出来事だったのかもしれません。“冒険”が終わりを迎えようとしていることに気づいたサイモンが、日常の中の友情を思い出して警告を発し、ミセス・コッカートンも“日常”に戻ってきてその友情に応えた、というところでしょうか。
2005.03.02読了