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暗闇の薔薇/C.ブランドThe Rose in Darkness/C.Brand |
1979年発表 高田恵子訳 創元推理文庫262-02(東京創元社) |
冒頭の状況をみると、あからさまに車の交換相手(フィン)が怪しいわけですが、死体の入っていた車がサリー自身のものだったことで、疑惑が曖昧なものになっているところが巧妙です。再度の車の交換を不可能に見せかけるフィンのトリック(私自身は、車の登録証がすり替えられたのかとも考えました)もよくできていると思いますし、それが薔薇の花という印象的な手がかりによって露見してしまうところも秀逸です。 しかし、一番の見どころはやはり、繰り返される仮説の提示に伴って〈八人の親友たち〉が次々と退場していく終盤の展開でしょう。それぞれの仮説はかなり強引なものもありますが、次々と親友を失いながらも、そのたびに新たな仮説をひねり出すサリーの姿が印象的です。特に、真相を知ってから読み返してみると、無意識のうちに誰かに罪を押しつけずにはいられないという、半ば狂気を帯びた彼女の心理状態が、どこか異様な迫力をもって伝わってくるように感じられます。 そして、最後にただ一人残ったエトの“告発”を受けて真実に気づき、それに耐えきれず、自らが“暗闇の薔薇”となってしまったサリー。何ともいえない余韻を残す結末です。 2003.06.09読了 |
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