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騙し絵/M.F.ラントームTrompe-l'oeil/M.F.Lanteaume | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1946年発表 平岡 敦訳 創元推理文庫271-03(東京創元社) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
他にも色々とツッコミどころはありますが、やはり何といっても奇天烈きわまりないすり替えトリックが強烈です。何せ、ぬけぬけと“秘密の通路”が使われるわ、5人もの偽警官が動員されるわとやりたい放題の感があり、執筆年代を考慮に入れても大胆すぎて無茶なトリックといえるでしょう。 解き明かされてみると他に可能性がなさそうなのは確かですが、このトリックを見抜くのは非常に困難です。冒頭に付された見取図で螺旋階段の相同性が示されてはいるものの、そこから二つの“小部屋”の可能性を思いつくのは難しいでしょう。しかも、単に“小部屋”を二つ用意するだけでは不十分で、模造品のダイヤも二つが必要(*1)ですし、何より監視に当たる警官も(ほぼ)二組存在しなければならないのが最大の障害で、城で毒殺されていた“警官”たちが偽物だったことが明かされる(262頁〜265頁)までは、欠片も思い浮かばないというのが実状ではないでしょうか。 さらに、以下に引用する、警官の巡回に関する本文の記述にも罠が仕掛けられています。
まず最初の〈伊-1〉には
ところが、「第1章」の冒頭では、“編集人”が
とはいえ本書のすり替えトリックは、殊能将之氏の2001年9月25日の日記中の、 しかしながら、実現のための“ハードル”を極度に下げることで代わりに得られたインパクトは絶大で、およそ忘れられそうにないという意味で非常によくできたトリックだといえるのではないでしょうか――といいつつ、“読者への挑戦”にそぐわないトリックだというところはやはり気になってしまうのですが……。
*1: いうまでもないかもしれませんが、310頁以降の“事件の経過”でいうところの〈小部屋I〉で本物とすり替えられる分が一つ、そして〈小部屋II〉で最初から最後まで展示される分が一つ、合わせて二つの偽物が必要となります。
これに関しては、犯人特定の手がかりとなっている複数の模造品の存在が、同時にトリックを暗示している……といえるかもしれません。 *2: ジャナン警視は〈小部屋II〉に足を踏み入れていないので、〈伊-2〉の “ジャナン警視が小部屋に戻り”は事実です。 *3: 例えばジャナン警視の場合は、午後零時半から午後二時半、そして午後三時から午後五時までの間です。 2009.11.22読了 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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