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ウサギの乱/霞 流一 |
2004年発表 講談社ノベルス(講談社) |
まず、犯人の特定につながっている自転車のロジックが秀逸です。タイヤ跡の謎についてはさっぱりわけがわからなかったのですが、犯人が途中で自転車の持ち主に気づいたという説明には十分に納得させられます。最終的には開錠されているために、真相が見えにくくなっているところも巧妙です。また、犯人が被害者の自転車を選んだのが単なる偶然ではなく、ダイナモが後輪側に付いているという条件に基づいているところもよくできていると思います。さらに、ダイイングメッセージのひねった使い方も見事です。 一方、驚天動地の(とは大げさすぎるでしょうか)密室トリックのインパクトも強烈です。犯人が室外から槍を投げつけたという“魔送球の密室”はあまりにも無理があり、レッドヘリングにしてもお粗末といわざるを得ないため、凶器だけでなく犯人自身が出入りしたというのが真相だろうとは予想できたのですが、まさかこういう形とは思いもよりませんでした。そのままでは出入り不可能な狭い通路からの脱出という難題を、犯人の死によって解決している点のみならず、死体を取り出すための工作を見立てによって隠蔽している点が非常によくできています。 2004.03.09読了 |
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