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さまよえる未亡人たち/E.フェラーズ

The Wandering Widows/E.Ferrars

1962年発表 中村有希訳 創元推理文庫159-19(東京創元社)

 マクフィー夫人がバスウェル夫人からもらった薬を飲んで死んだという事実が、犯人の狙いをわかりにくくするというだけでなく、一種の不可能状況を作り出しているところが非常に面白いと思います。犯人がバスウェル夫人を狙ったとすれば、別の人間を殺してはいけないという良心の問題だけでなく、事件がおきてしまうことで真の標的にも警戒されてしまうことになるわけですから、(知ってさえいれば)マクフィー夫人が薬を飲むのを止めるのは当然でしょう。

 その強固な不可能状況、いわば犯人を守っていた“壁”が、何気ないたった一言でもろくも崩れ去っているところが見事です。しかも、犯人が聞いていなかったという手がかりをその場面の中に隠すのではなく、別の場面での何の変哲もなさそうな会話の中に配置しているところも巧妙です。

2006.01.04読了

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