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薪小屋の秘密/A.ギルバート

Something Nasty in the Woodshed/A.Gilbert

1942年発表 高田 朔訳 世界探偵小説全集20(国書刊行会)

 エドマンドの企みは冒頭から見え見えで、序盤は倒叙ミステリかとも思えるほどです。そして少しずつほころびを見せながらも、その計画は成功したかに見えたのですが……。

 まず、本文97頁のグレイスに関する描写、特にエドマンドが彼女の荷物を列車に乗せた場面などはいかにも怪しげで、叙述トリックが仕掛けられていることが比較的予想しやすいのではないでしょうか。つまり、この時点でグレイスが殺されていることを見破るのはさほど難しくないと思います。

 むしろ、“薪小屋の秘密”を知ったアガサが殺されずに、終盤に再登場してきたのが驚きでした。当初からエドマンドの狙いはアガサの命だったはずですし、秘密を知られた彼女を生かしておけば致命的なのは間違いありません。

 それにしても、アガサの再登場というこの苦境もほとんど乗り切ってしまうエドマンドのしたたかさには恐れ入ります。致命的どころか、グレイス殺しの罪までもアガサに押し付けてしまうその手並みには脱帽です。最終的にエドマンドを破滅へと追い込むクルック弁護士にしても、エドマンドの証言の矛盾を突いてはいるものの、完全に証明しきれてはいないのですから。

2002.08.20読了

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