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私感訳注:
※夢江南:詞牌の一。詞の形式名。単調 二十七字。平韻一韻到底。(これは単調。別体三種あり)。詳しくは 「構成について」を参照。浣渓沙
この詞は花間集 第二 夢江南 二作品中の其二である。
※梳洗:くしけずることと洗うことで、朝起きたときなどの身繕いのこと。ここでは、「斜暉」とあるので、ここでは昼寝の後の身繕いか。梳沐。なお、梳洗を「そせん」と読むのは慣用音。
※罷:おわる。やむ。
※獨倚望江樓:ひとりで河畔の高殿に上って、眺めると。この語の並びでは、このように読むのは些か苦しいが、詞調や節奏、また押韻でやむを得ない。もっとも「獨倚『望江樓』」という風に、「望江樓」という名の建物があったと見れば少しも問題はないが、ご都合主義にすぎる。ここは、「獨倚江樓望江…」の意味で作られているとみる。後日註:「温庭」(大連出版社)の註で「河辺に建てられた江を見ることができる高殿」とあった。
※過盡:(全てが)通り過ぎてしまったが。
※千帆:多くの帆掛け船。
※皆:みな。
※不是:「是」ではない。そうではない。自分の思っている(あの人が乗っている)舟ではない。
※斜暉:夕陽。斜陽。落暉。
※脈脈:情を含んで(見つめて)いるさま。思いを寄せて尽きないさま。
※水悠悠:自分の心は「脈脈」として切ない思いなのに、それに反して、自然の川の流れは、物に拘泥せずに悠々と流れ去っていく。
※腸斷:腸が断たれるほどの辛い思い。
※白蘋洲:蘋は萍で、浮き草。白い花をつけている。それがある川の洲。蘋萍(ひんへい)、萍蘋(へいひん)の小さな中洲。なお、この字はその持っている意味「根無し草」から、必ずしも歓迎されていない字である。もっともそれは、千年後の現在の話であるが。この詞では恐らくそんなニュアンスはなかろう。それよりも、「汀洲採白蘋,日落江南春。…」と相手を想い慕う詞と関係があるかも知れない。
◎ 構成について
双調 二十七字。
平声韻一韻到底。韻式は「AAA」。韻脚:「樓悠洲」は 第十二部平声。
○●,
●●○○(韻)。
●○○●●,
○●●○○(韻)。
●●○○(韻)。
となる。
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