牛棚之歌　詩詞世界　碇豊長の漢詩　燦爛陽光之歌　文化大革命期の詩歌

　　　　　　　　　　牛棚之歌

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

工廠工人做不了工，
農村農民務不了農。
知識分子是臭老九，
一張白卷當英雄。

　
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　　　　　　　　　牛棚の歌

工場の労働者は　仕事をなしおおすことができなくて，
農民は　畑仕事をなしおおすことができない。
知識分子は、九番目の鼻つまみ者であって，
一枚の白紙答案で、英雄となる。

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◎　私感註釈：

※牛棚之歌：ぶたごやの歌。　・牛棚：ぶたごや。思想上問題があるとされた人物を隔離審査するための施設。牢獄。

※工廠工人做不了工：工場の労働者は、仕事をなしおおすことができなくて。　・工廠：〔こうしゃう：gong1chang3○●〕工場。　・工人：労働者。階級成分を表す。“工人階級應該領導一切”とされた。　・做不了：なしおおすことができない。　・做：する。　・-不了：…しおおすことができない。動詞の後に附き、その動作などがなしおおすことができないことを表す。　・工：仕事。

※農村農民務不了農：農民は畑仕事をなしおおすことができない。　・農民：農村での中核的な階級で、貧農はその核心力量である。　・務不了：（畑仕事を）しおおすことができない。　・務：（畑を）つくる。しごとをする。（畑仕事を）する。　・農：農作業。農業。

※知識分子是臭老九：知識分子は、九番目の鼻つまみ者であって。　・知識分子：インテリ。高卒以上の学歴を有する頭脳労働者。文革時は批判の対象だった。　・是：…は…である。これ。主語と述語の間にあって、述語を明示する働きがある。　・臭老九：九番目の鼻つまみ者。九番目の鼻もちならない者。腐った九番目の息子。知識分子を貶しての呼称。「地富反壊右叛特走」（地主、富農、反動派、悪者（壊分子）、右派、裏切り者（叛徒）、スパイ（特務）、敵の手先（走狗））の次の九番目に位置づけられた。伝統的な言い方では「儒」。「地富反壊右」は黒五類でもある。　・臭：蔑んで罵る時に使う名詞の接頭辞。“臭三八”等。　・老～：排行を表す。なお、長男は、“老大”。

※一張白卷當英雄：一枚の白紙答案で、英雄となる。　*“白卷英雄張鐵生”のことをいう。張鉄生は大学の入試で答案に答えることが出来ず、その答案用紙の裏に、次のような教育制度（受験制度）の批判文を書いた。「工場で汗を流して働くプロレタリア社会の主人公である者は、出題にあるような瑣末な事柄を諳誦する時間的な余裕はない。現在のような受験制度は、ブルジョアジーの子弟しか合格できない。“工人階級應該領導一切”と謂いながら、プロレタリア文化大革命をしている社会主義の国の大学受験が、このように資本主義に奉仕するようなものであってよいのだろうか？！」といった批判、告発の文章だったような記憶がする。ために、革命的な教育関係者は苦慮して彼を合格とし、その後高い地位にも就いた。“白卷英雄張鐵生”（白紙答案の英雄・張鉄生）の誕生話である。　・一張：一枚の。量詞「-枚」。或いは、人名「張鉄生」をも暗示しているか。　・白卷：（テストの）白紙答案。なお、答案用紙は“卷子”という。　・當：担う。ひとしい。あたる。…となる。　・英雄：ここでは、資本主義的な教育制度批判の英雄のことになる。

◎　構成について：

　　韻式は「AAA」。韻脚は「工農雄」で、現代韻〔－ong韻〕。平水韻では、上平一東（工）。二冬（農）。次の平仄はこの作品のもの。分、當は、両韻。

○●○○●●●○，（韻）
○○○○●●●○。（韻）
○●●●●●●●，
●○●●○○○。（韻）

２００５．４．１６完
２０１３．９．１０補