大阪でうまれた女
男を気持ちよくさせることに命をかける21才、ヒトミの場合」 (04/03号掲載)

 セックスにおいて、基本的に男は女を攻める側だ。あの手この手を駆使し、女に「こんなの初めて」だの「もう死んじゃいそう」だの言われると、それこそ男冥利に尽きるというものだ。
 言い換えれば、男は女を満足させることに非常に気を遣う哀れな生き物なのだが、俺など風俗でも何とかイカせようと必死だから、もはや悲しいサガとしか言いようがない。
 もっとも、こんな男が多いから、女は気持ちよくしてもらうのが当たり前と考えてしまう。風俗嬢でもない限り、男に快感を与えたい、満足してもらいたいと思う女性はなかなかお目にかかれない。
 ところが、この大阪には存在するのだ。男に「今までで一番気持ちよかった」と言わせることに命をかける女、ヒトミ。今回は、この恐るべき浪速のOLと、男カワウチのセックス対決をお届けしよう。

 昨年10月、インターネットのオークションにCDを数枚出品した。ややマニアックなアーチストで、買い手がつかないかと思いきや、1人の女性によってすべて落札されてしまった。それがヒトミだった。
 入金を確認後に商品を発送、お礼のメールなどを送るなか、彼女が21才のOLだと知った。
 音楽談義だけで盛り上がってる場合じゃない。不純な気持ちがムクムクわき起こる。
 その後も何度かメールをやり取りするうち『一度お互いのCDを貸し合いっこしよう』と、会う約束を取り付けた。もちろん、この時点で下心は微塵も見せていない。
 数日後の夜、待ち合わせのキタに彼女は現れた。全身黒づくめのラフなパンツルックで、まさにロック少女といった出で立ち。化粧っ気もまったく無く、俺が勝手にイメージしていた新人OLのイメージとはかけ離れている。顔も地味〜にした優香といった感じか。
 期待していたぶんテンションは下がったものの、とりあえず居酒屋へ。音楽の話で盛り上がった後、話題を変える。
「だいぶ仕事は慣れた?」
「まあね。社員が若い人ばっかなんで堅苦しくないからいいかな」
「若い男多かったらいいやんか。いい男はおるの?」
「実は私、若い男全然ダメやねん。35過ぎんと男として認められへんというか、同じ世代の男は問題外やねん」
 40男の俺からすると、非常にありがたい話だが、そらまたなぜ?
「年上やったら甘えられるから?」
「ううん、違う」
「金持ってるから?」
「ううん、全然」
「あ、わかった。エッチうまいからやろ」
「アハハ、ちゃうちゃう。私、自分が気持ちよくなることに全然興味ないし」
「え、エッチ嫌いなん?」
「ううん、どっちかっていうと好きな方」
 どうにも要領を得ないが、実際、彼女が今まで付き合った男は大半が妻子持ちだったらしい。
 ただ、ヒトミからは一切連絡をぜす、相手から「会いたい」と言われれば、夜中であろうが体調が悪かろうが、いやな顔ひとつせず男に会いにいき、抱かれてきたのだという。
 ヤりたいときは電話1本ですぐ駆けつけてくれる女。男にとっては、これ以上ない便利な女だが、なぜそこまで相手に尽くすのか。それぐらい男を好きになってしまうということなのか。
「んー、どっちかっていうと男の人に気持ちよくなって欲しいだけやねん」
「セックスで?」
「だけじゃなくって、とにかく一緒にいるときは相手に気持ちよくなって欲しいねん。だからどんな無理でも聞いてあげるし」
 なんかようわからんなぁ。
「エッチとかでも、女のコって、終わったあと優しく抱きしめて欲しいとか、頭を撫でて欲しいとか言うやん。そんなん全然いらんねん。男の人さえ気持ちよければ」
 さらには、男を喜ばすためテクニックにも磨きをかけ、自前のコスプレの衣装も持っているのだとヒトミは言う。
 たまらんなぁ。こんな若いコにここまでされたらオッサンたちはメロメロやろ。
「うん、最初は遊びっぽかった人もだんだん真剣になっちゃって困る。結婚したいって言い出す人もいるし」
「真剣に付き合うのはいいことやん」
「でもしょせん妻子あるし、家庭を壊す気もないし。かといって若い男はイヤやし」
 そしたら、どうするん?
「残念だけど別れるしかないよね」
 うーん、やっぱりわからん。なぜ彼女は男に気持ちよくなってほしいのか。

「実は…」
 しばし間をおいた後、彼女は話し始めた。
 高校生のとき付き合っていた彼が自分の友達と浮気した。結局は別れのだが、その際、彼に「(友達の方が)エッチがよかった」と言われ、相当ショックを受けたらしい。
「で、そんときから、今までで一番気持ちよかったと言われる女になろうと心に決めてん」
 決めたからといって、どうにもならないと思うが、実際その後彼女は様々な男と付き合い、最終的には「やっぱりお前が最高」「今までで一番よかった」と言わせてきたらしい。
「そう思ってもらえなかったら私の負けやねん。だから勝つまで努力するし、負けたままでいることはありえへん」
 なかなかすごい女と出会ったもんだ。彼女の話が本当なら、かなりのテクニシャンのようだし、こちらの要求にも応えてくれそうだ。
 俺もゼヒとも一度お手合わせ願いたい。幸い、ヒトミは酔っ払ってシモネタ全開だ。このまま口説き落としてやろう。
「だめだめ、今日生理やねん。それに、年上やったら誰とでもヤる訳じゃないで」
 俺じゃダメってことか。いやいや、こういうタイプの女はあきらめず、粘ってお願いするに限る。今日は無理でも、改めて相手してもらえんもんやろか。
「うーん…じゃ、いいよ。知り合ったのもなんかの縁だし、音楽の趣味も合うしね」
 おうおう、そうこなくっちゃ。
「河内さんってどんなのが好きなん? どんなコスプレ好き?」
 どうやら、ヒトミの勝負魂にスイッチが入ったらしい。
 けど、コスプレってのはどうだろ。俺も今までのルポの中で、バスガイド、巫女装束、喪服といったいでたちの女たちとの女とのエッチを楽しんだが、彼女たちは実際にその職業に就いていたり、本当に葬式帰りだったりとリアリティがあった。
 単純に色んな衣装を身に着けるだけのコスプレには正直、興味がない。というか、逆にしらけちゃうじゃないだろうか。
 でも、ここで断るのも角が立つ。とりあえず、持ってる衣装を適当にみつくろってもらおうか。
 重要なのはあくまでセックスの中身。絶対負けられないと大きなことを言ってるが、俺とて、人並み以上に経験とテクは積んできた男だ。果たして、どっちが勝つか。甘くみてたらあかんでぇ。

 翌週、待ち合わせた時間ちょうどにヒトミはやってきた。手に大きなボストンバッグ。中に衣装が入っているようだ。
 ラブホにチェックインすると、彼女はバッグを開け、ベッドの上に衣装を並べ始めた。セーラー服、バニーガール、これはナースか…。って、自分いったい何着持ってきたんや。
「全部で7種類かな。手錠と目かくしもあるよ」
 セーラー服は自前としても、こんなにたくさんの衣装、どこで?
「私、高校、私服やってん。セーラー服はドンキで8千円出して買ったんやで。バドガールとバニーはゲームセンターでゲットしたし、あとは今まで付き合ってた彼からのプレゼントかな」
 チアガールの衣装に“Merry Christmas”って書いてるけど、もしかして。
「そう、前の彼からクリスマスプレゼント。で、これ着たままイブの夜にエッチしたの」
 体操服とブルマはどこで売ってんねん。
「それはね、前の前の彼と行ったホテルに『体育館ルーム』があってね、そこで売ってた」
 前の彼も、前の前の彼もコスプレにはまってるなんて、そんなにええのか、コスプレって。
「じゃあ、着てくれる?」
「え、全部?」
 そりゃそうや、せっかく持ってきてくれたんやから。この中で、俺が一番興奮するのはどれか調べなあかんし。
 まずヒトミはセーターを脱ぎ、上からセーラー服に着替え始めた。うーん、生着替えってなかなかドキドキするやん。
 ジーパンの下から現れたパンティは横が紐になって結んであるヤツだ。なかなかエッチなん穿いてるねえ。
「だって、これをほどくのが好きな男の人、多いんやもん」
 そんなとこまで気遣っとるんかいな。

          

 セーラー服に続いて、体操服、チアガール、バニーガール、ナースと、どんどん衣装を変えていくと、知らず知らずに興奮している俺がいた。いつのまにかムスコもアソコもびんびん。
 しかし、その裸エプロンはスケベやのう。下の方はモロふんどし状態やないの。しかも、こういうのを色気ブリブリの女じゃなく、地味ーな顔のヒトミがやってるとこが、かえって生々しくていやらしい。
 よーし、シャワーを浴びた後は、この衣装で勝負してもらおうやないか。

 浴室に入るとイスに腰掛けさせられ、ヒトミが丁寧に洗ってくれた。特に下半身にはきめ細やかな指づかいで、裏の方までソフトに刺激する。ソープかと錯覚するほどのテクニック、マジで気持ちよすぎる。
 なんとか彼女の先制攻撃を耐えしのぎ、ベッドに移動。いよいよこれからが本番だ。
 しかし、このエロエロな裸エプロンだと、ヒトミのペースのまま撃沈されてしまいそうな気がする。ここは衣装をセーラー服にチェンジ。2種類あるスカートの中で、チェック柄の方を選び着てもらう。
「じゃ、河内さん、横になって」
 俺のガウンの紐をほどき、ヒトミがキスをしてくる。先攻はヒトミだ。
 細かな舌使いのキスの後、乳首を舌と指で攻めたてる。うまい。うますぎ。おまえはプロか?
 そしていよいよフェラという段階になったところで、唐突に彼女が言った。
「私、4つの技持ってんねん」
「へ?」
 何でも、彼女が今まで相手した男に気持ちよくなってもらうために創意工夫した結果、編み出した技なのだそうだ。上等だ。とくと披露してくれ。
 1つ目の技は3分の1ほど頬張りながら、口の中で舌で亀頭のカリの部分を刺激するというもの(写真@)。き、気持ちいい。というか、口の中でよくこんなに舌を器用に動かせるものだ。
 続けざまに、亀頭の先の割れている部分に舌を押し当てて広げるように刺激する2つ目の技(写真A)。んー、これはどうかな。
 俺の反応を見てか、すぐに3つ目の技に移行。裏筋から根元まで微妙な舌使いで往復する(写真B)。やばっ、気持ちよすぎるやん。
 連続してくりだした最後の技は「玉攻め」だ。舐めたり吸ったり、息を吹きかけたり(写真C)。特に指でサオを刺激されながらの攻撃は、かなりダメージが大きい。

@ A B C

 ヒトミは再度1つ目の技に移行。執拗に俺のペニスを攻めたててきた。あ、あかん、気持ちよすぎるって!
「お口の中で出していいよ。飲んであげる」
ヒトミのうれしい申し出に思わず従いそうになってしまう。彼女のテクなら1回イッてもすぐに回復できるだろう。
 しかし、ここは必死で我慢。このままだと、彼女の思いのままだ。
 断腸の思いでフェラをやめさせ、横になってもらう。攻守交替だ。だてに長い間生きていないってことをその身体に思い知らせてやる。

 セーラー服をたくし上げ、乳首を攻める。感度はいい。丁寧な愛撫に身体がピクンピクン反応している

     

 せっかくの制服姿だから、少しSMっぽく攻めてみるか。はい、四つんばいになってみ。んで、後ろ手に手錠を掛け…いや、彼女の持ってきた手錠を使うのはシャクだ。制服のスカーフで縛ってやれ。
 その状態のままギンギンのペニスを握らせる。ぎこちない手の動き。それがかえって俺を興奮させる。
 パンティの股のところから手を滑り込ませると、ヒトミもすでにヌルヌル状態。こ攻めどころだ。ヒモパンの片方をほどき、あらわになった濡れ濡れの性器を指でいじる。
「あっ、あーん」
 気持ちいいのだろう、握った俺のペニスをしごく手の動きが激しくなる。さーて、そろそろぶち込むとするか。
 後ろ手に縛った体勢のまま、バックから挿入。
「あーっ!」
 ヒトミの喘ぎ声を聞きながらガンガン腰を振る俺に対し、彼女も腰を振り反撃。微妙にお尻にひねりの動きを加え腰を振っている。おまえ、ほんまに21か?
 縛っていた手をほどき、正常位に移行。ヒトミは、俺の腰の動きにうまくシンクロさせて腰を振り続けている。これじゃ、どちらが攻めているかわからない。
「上になっていい?」
 いよいよ最後の攻撃に出るつもりか。上等だ。おまえの攻めを守りきってやる。下から突きまくったるで。
 …もくろみは甘かった。上にまたがったヒトミに対し、下からの俺の攻めは歯が立たず、あっというまに射精してしまったのだ。あかん…。

 ベッドに横になり「ふーっ」とため息をついている俺を、ヒトミがクスクス笑っている。馬鹿にしたような態度ではないが「どう、気持ちよかったでしょ」とでも言いたげだ。
 正直、完敗だ。世のオッサン達が彼女の虜になるのもよくわかる。
 しかし、ヒトミも結構気持ちよかったはずだ。引き分けはちょっと無理かもしれないが、僅差の判定負けには持ち込めたかも。
 だから、あえて謙遜して言ってみた。
「メチャメチャ気持ちよかったで。ヒトミを満足させることはでけへんかったのは残念やけど」
 当然、彼女も「ううん、私も気持ちよかったよ」というものだと思っていた。ところが、
「私、男の人さえ気持ちよかったらそれでええねん」
 こいつには勝てん!

 しかし、俺にはどうしてもわからない。彼氏に浮気されたぐらいで、ここまで男を気持ちよくさせることに執念を燃やすだろうか。何か、自分の意志というより、強迫観念がヒトミを突き動かしているような気がしてならないのだ。
 その疑問は、最後にシャワーを浴び、煙草を吸っているとき、突然解決された。
「…あのな、私、初めての男ってな、実は父親やねん…」
 突然の、衝撃的な告白だった。何でも、小学校6年から中3までの間ずっと関係を強要され、中学のときは「父親への復讐のため」同い年の男と援助交際していたこともあるらしい。
 勝手な推測だが、もしかしたら、年上の男を心も身体も自分の虜にしてしまい、最後は彼女から振るということを繰り返しているヒトミは、いまだに父親に対する復讐を続けているのかもしれない。
 年上の男を気持ちよくさせることに執念をかけた彼女の様はちょっと痛々しい。楽しんでいるという感じがしないのだ。
 やっぱりエッチというのは相手を感じさせられるかどうかではなく、どれだけ楽しむかが大事だと俺は思う。要は、楽しんだもん勝ちなのだ。
 そう言う意味では俺は「試合に負けて勝負に勝った」と言えるかもしれない。負け惜しみだけど…。


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