東野圭吾 共著1 | ||
サンタのおばさん |
本作は、東野さんの著作としては初となる絵本である。最新長編『片想い』の、クリスマスにまつわるあるエピソードから生まれた作品だという。
今年もイブが近づいて、
恒例のサンタクロース会議が開かれます。
その年から新たに加わることになったサンタは何と女性。
女性サンタを認めるかどうかで会議は大騒ぎに……。
以上は帯からの引用だが、まあこういう内容である。『片想い』のあるエピソードは、ジェンダー問題に切り込んでいるだけに重い内容だったが、本作は気楽に読める作品である。そりゃそうだ。絵本に必要なのは温かさ。重厚さではない。
真っ白な髭に赤い衣装のおじさんという、一般的なサンタクロース像ができあがった経緯を僕は知らないが、女性のサンタはなぜだめなんだろうか? そんな素朴な疑問から、本作は始まる。
さりげなく各国の事情を織り込んでいるところに東野さんらしさを感じるが、絵本を絵本たらしめているのは絵であるという、当たり前のことを実感させられた。杉田比呂美さんの絵は素晴らしい。CGでこの温かさを表現できるか。
一昔前には「学研のおばちゃん♪」とか「ニッセイのおばちゃん自転車で〜♪」なんてCMが流れていたものである。「おばさん」という言葉がいい意味で使われることがほとんどない現在では、女性蔑視だと受け取る人もいるんだろうなあ。また、NHK教育で「はたらくおじさん」という社会科の番組を放送していたが、今じゃこのタイトルは使えないだろうなあ。
何が言いたいんだ僕は…。まあ、とにかく。サンタのおばさんでもサンタのおじさんでもいいじゃない。世の中過敏に反応しすぎだ。ちなみに、我が家に学習・科学を届けてくれたのは学研のおじさんだった。