五十嵐貴久 28 | ||
リターン |
ホラーサスペンス大賞受賞作『リカ』のまさかの続編が刊行され、久々に五十嵐貴久作品を手に取ったわけである。正直、猛暑に打ってつけの恐怖を期待したわけではないことを告白しよう。うーむ、前作同様、やっぱり滑稽だった。
高尾で発見された遺体は、10年前にリカに拉致された本間だった。未解決事件を扱うコールドケース捜査班の尚美と孝子も捜査本部に加わった。捜査が難航する中、孝子の恋人である捜査一課の奥山から連絡が途絶える。2人で奥山の自宅に向かうと…。
と、帯に書いてあるのだが、前作を読んでいればこの先は容易に予想できるだろう。というより確信するだろう。怖いは怖いですよ。血が苦手な方には絶対お薦めできない、このグロ描写…。実際にこんなものを見たら、「彼」のように廃人同然になるのも無理はない。
「彼」と違い、2人の折れなかった警察官魂には敬意を表したい。それでも、孝子には申し訳ないが、その様子を想像すると怖さより滑稽さが勝ってしまう。あまりにも予想通りなだけに。2人とも薄々予想はしていたのではないか?
前作の本間とは違い、同情の余地こそあるが、やっぱり「自業自得」なのも引っかかる。奥山と2人の行動、特に2人のある行動には激しく突っ込みたくなる。心情的にわからなくはないが、警察官としてはあり得ない。厳しい処分は免れまい。
敢えて構造をシンプルにし、リカ対警察の知恵比べに重点を置いたのだろうが、怪物・リカの復活編にしては地味な印象を受ける。どうせぶっ飛んだ話なのだから、もっと派手に暴れさせればよかったのに。最後の絶体絶命のシーンは…このタイミングでなければいけなかったのか??? 中途半端というか、この程度で済んでよかったというべきか…。
ある意味、本作の読みどころは、事件の解決後にある。実に皮肉が効いている点は評価したい。この後どうなってしまうのか、読者はいくらでも嫌な想像をしてしまう。もしかして、さらなる続編が…ということはさすがにないか。
色々謎のままに終わった感があるが、それはそれで一興だろう。