京極夏彦 03 | ||
狂骨の夢 |
シリーズ第3作。前作、前々作の衝撃が強かったので、いささかパワーダウンしている感は否めないかな。ページ数が減ったせいだけではないだろう。減ったとはいっても、十分に長いのだが(※文庫版は大幅に加筆されています)。
本作の裏表紙の推薦文を書いているのは、あの水木しげる氏である。京極さんは関東水木会の会員であり、水木氏を敬愛してやまないことで知られているが、水木氏直々に推薦文を書いてもらったことはご本人としても嬉しかったようだ。しかし、水木氏の推薦文の方が、内容よりもインパクトがあるような…。申し訳ないが。
本作は、京極作品としては珍しく叙述トリックを駆使した作品だ。なるほど、この仕掛けにはやられた。何とも悪趣味な家を建てた人間がいたものである。この家の井戸から、何体もの首なし死体が発見される。この奇妙な家のおかげで、住人である佐田朱美は容疑者として連行されてしまう。
タイトル通り、髑髏が本作のキーワードなのだが、ある髑髏を巡るドタバタ劇には苦笑してしまった。黄金の髑髏なんてものを見てしまったら、恐怖を感じる以前に目が点になってしまいそうだ。黄金の髑髏は、ある宗派にとって重要な意味を持つのだが…。決して明るい話ではないのだが、滑稽な印象が最後まで拭えなかった。
からっとした朱美さんのキャラクターは魅力的だ。戦中から戦後にかけての激動の時代にあって、本人も決して幸福とは言えない人生を送ってきたにも関わらず、真犯人への気遣いを見せる。ラストの朱美さんの台詞のおかげで、終わり良ければすべて良しかなという気にさせられた。
「お前なんか大っ嫌いだッ!」
ああ、哀れな髑髏…。
まあ、あまり重苦しくならずに読めるという点では、ファン以外の人にも手が出しやすいかもしれない。