森 雅裕 24―2

さらば6弦の天使

いつまでも折にふれて2

2001/12/30

 『いつまでも折にふれて』の続編。最初で最後のライブを行って解散した"HERGA"の面々は、それぞれの道を歩んでいた。伝説のライブから4年…。

 再三にわたり"HERGA"に対戦要求を突き付けていた"4 REAL"。彼らは「対バン」でことごとく相手を打ち負かしてきた。対戦相手に降りかかる事件。焚き付けるマスコミ。とうとう"HERGA"は要求を呑み、メンバーたちが再び集う。

 「対バン」なんて言葉は始めて聞いたが、このシチュエーションは土曜深夜の名物番組だった『イカ天』(イカの天ぷらではない)を思い出す。違いは、審査員がオーディエンスであること。はあ、あれからもう10年以上経つのねぇ。当時のバンドブームを知る世代としては、何だか隔世の感がある。

 それはともかく、悲しいながらも力強い物語だった『いつまでも折にふれて』とは対照的に、本作はただただ悲しく血生臭い。もはや引き返せない、二組のバンド。そして二人のヴォーカリスト、泉深と葵。横浜スタジアムでの対決が刻々と迫る。

 色々と複雑な事情を抱えた"HERGA"の泉深だが、少なくとも根底には音楽への愛を、仲間への信頼を感じる。一方の"4 REAL"の葵はどうだ。音楽への愛がないとは言わないが、本質は満たされぬ思いと鬱屈。それが創作のエネルギーとなるなら、それはそれでいいのかもしれないが。

 あるギターを巡る愛憎劇の顛末とは…。"HERGA"は、"4 REAL"は、そして両バンドの対決をお膳立てした人物は、何かを得られたのか?

 深読みすると、音楽に限らず芸術に勝ち負けという概念を持ち込むことの虚しさを訴えているのだろうか。音楽の賞も、絵画の賞も、そして文学の賞も所詮は主観である。「結果が数字で現れるスポーツの賞のみが本当の意味での賞である」とは、船戸与一氏の弁だったか。何だかまとまっていないが、ああ悲しすぎる…。



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