岡嶋二人 29


ダブル・プロット


2011/02/18

 講談社文庫の刊行予定に岡嶋二人の名を見かけたのは、先月のこと。タイトルは『ダブル・プロット』。もしや未収録作品集かっ!

 というわけで、岡嶋二人名義としては実に20年ぶりの新刊なのだが、実態は『記録された殺人』に未収録作品3編を追加した新装版である。井上夢人さん自らが、この不況の中出版社も必死なのだから、と講談社を擁護している。

 以下では、未収録作品3編についてのみ触れておく。「こっちむいてエンジェル」「眠ってサヨナラ」の2編は、女性編集者の入江伸子を主人公にした幻のシリーズ作品である。本来ならばシリーズとして単行本刊行を予定していたのだろうが、2編で打ち切りとなった。

 井上さんによれば、掲載誌「月刊カドカワ」の版元である角川書店との折り合いが悪くなったり、取材方法に問題があって相手に拒絶されたりしたためだそうだが、興味のある方は読んでみてください。で、肝心の内容だが…。

 「こっちむいてエンジェル」は、動機といい結末といい岡嶋二人らしくもないひねりのなさ。初出当時でもここまで短慮な女性はそういなかったのでは? 悪いが同情はできなかった。「眠ってサヨナラ」は、動機の面ではややひねっているものの、とばっちりもいいところ。初出当時でもここまで短慮な男性はそういなかったのでは? もちろん同情なんぞできん。

 表題作「ダブル・プロット」。岡嶋二人に違う雑誌からまったく同じ依頼が舞い込んだ。新聞記事を元に短編を書いてくれというのだが、ネタとなる記事は同じ。その意図とは…。岡嶋二人としては一風変わった作品ではあるものの、出来の方はそれほどでもない。

 『記録された殺人』で読んでいた6編も再読したけれど、未収録短編3編よりずっと優れているというのが正直なところ。僕としては、まだ未読の3作品『珊瑚色ラプソディ』『クリスマス・イヴ』『眠れぬ夜の報復』の重版を、講談社殿にお願いしたい。



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