11月11日は相方さんに同行してもらい、『作家と遊ぼう! MYSTERY COLLEGE』という日本推理作家協会60周年記念のイベントで立教大学池袋キャンパスへ。池袋駅から会場へ向かう道すがら、雨が激しくなってくる。立教大では同日に資格試験やら何やらが行われるため、狭い歩道は大混雑だ。ようやく立教大にたどり着くが、それらしい看板が何もない。資格試験の案内の人に聞いてようやくそれらしい場所が見えてくる。ところが今度は受付の場所がわからない。日本推理作家協会が手弁当で運営しているとはいえ、案内面の不備があまりにも目に付いた。大勢立っているスタッフは何のためにいるのだろう。
とりあえず10時からのオープニングを見る。大沢在昌理事長の挨拶後、すぐプログラムが始まるため参加作家はそそくさと解散。色々なプログラムが同時進行するためすべてを見ることはできない。この日絶対見たかったのは、東野圭吾さん、福井晴敏さん、高野和明さん、薬丸岳さんの4名による「乱歩賞作家のからさわぎ」というトークセッション。11時半からであることを確認する。また、3回にわけてサイン会が行われるが、1回目はトークセッションと重なっている。サインは当日本を買った人のみ、作家一人あたり30冊限定である。2回目以降で知っている作家の誰かにもらえればと思い、サイン会用書籍の販売会場に行くと、すでに長い列が。並んでいるうちに、伊坂幸太郎さん、恩田陸さんは早々に売り切れ。石田衣良さん、北村薫さん、桜庭一樹さんとどんどん売り切れていく。自分が買ったのは2回目の作家の中から平山夢明さんの『他人事』。すでに買って読んでいるのだが…。この時点で整理券は30冊中の6番目で、おいおい大丈夫かと心配になってくる。3回目は誰も読んだことがないのだが、前から気になっていた道尾秀介さんの『ソロモンの犬』を購入。こちらは13番目だった。
本を買った後、トークセッションの会場へ。すでに列ができている。11時に開場すると、前の席から埋まっていく。自分と相方さんも前の席を確保する。時間になると、現在放映中の『ガリレオ』を意識して白衣姿の東野圭吾さんが登場。眼鏡は福山雅治がドラマで着用しているモデルと同じだそうだが、フジテレビがくれなかったのでYahoo!で買ったとか。第31回江戸川乱歩賞受賞者で先輩作家の東野圭吾さんが司会を務め、近年の乱歩賞受賞者である福井晴敏さん(第44回)、高野和明さん(第47回)、薬丸岳さん(第51回)に質問するという形でトークセッションは進む。東野圭吾さんには一度サイン会でお会いしたことがあるが、これだけ長い時間話しているのは初めて目にした。ある程度シナリオはあったのだろうが、それにしても見事な司会ぶりである。観客のハートを完全に掴み、笑いを誘う。福井晴敏さんのとぼけたキャラクターもいい。
途中で第37回の受賞者である真保裕一さんが乱入してきた。受賞者に賞金1,000万円が贈られるようになったのは第38回からで、賞金なし時代の最後の受賞者だった真保さんはことあるごとにネタにしているらしい。ちなみに複数の受賞者が出た場合は賞金を等分することになっており、2人同時受賞だった福井さんも賞金が半減したことをネタにしていた。真保さんが話しているのは初めて見たが、硬派な作風からは想像できないほどテンションが高い。わざとやっているとは思うが、こんな面白い人だとは。しかし、最近の作品は苦戦しているだけに、少々痛々しく感じたのは自分だけだろうか。以前から東野圭吾さんと何かと比較され、先にブレイクしたが、今では完全に立場が逆転しているし…。以下、印象に残った言葉。
最後の一つは耳が痛い。この後、まさに1冊も読んだことがない道尾秀介さんのサイン会に行く予定だけに…。何はともあれ、このトークセッションは相方さんも楽しめたようでよかった。
13時にトークセッションが終わり、13時半からの第2回サイン会まで30分しかないが、急いで食堂に向かう。朝食を取らなかったので、ようやく食事にありつける。我が母校の食堂と違い、天井が高く洒落た作りだねえ。カツ丼セットを食べたが、500円という値段を考えるとまあまあ。肉は我が母校より厚い。
その辺を散策するという相方さんを残し、すでに始まっている2回目のサイン会の列に並ぶ。人が少ないことを危惧していた平山夢明さんだが、どうやら杞憂に終わったようだ。同じ回の伊坂幸太郎さんの列に並んでいるのはほとんど女性。グロい話ばかり書く平山夢明さんだが、笑顔が素敵なナイスミドルであった。伊坂さんほどではないが、意外と女性が並んでいたのも納得か。
14時半からすぐ3回目のサイン会がある。とりあえず相方さんとチャリティーオークションの会場に行く。ちょうど東野圭吾さん自作の皿がオークションにかけられるところであった。5万円で落札。狙いを定めて来た人が多いのだろう、この他にも万単位が簡単に飛び交う。予定になかった京極夏彦さんが急遽登場し、和装のため着用しなかったスタッフジャンパーを商品に付けると発表した。さらに宮部みゆきさん着用のスタッフジャンパーも宮部さんの商品に付けるという。
京極さんが去り、大御所の北方謙三さんが登場すると、最近流行りのチョイ悪オヤジどもが逃げ出しそうなほど貫禄十分。何年ぶりかで電車に乗ったら、男子高校生の集団に「おい、あのおっさん北方謙三の真似してるよ」と言われたというエピソードは笑った。そこで、サングラスとハンチングで変装して乗ったら、今度はご婦人の集団に「ねえ、あの人北方謙三の真似してるわよ」と言われたとか。出品されたのはそのサングラスとハンチング帽。4万円で落札。北方さんに抱擁された落札者の女性は感激して泣き出した。ちなみに、サングラスはレイバンで、シチリア伝統のコッポラと呼ばれるハンチング帽は、奇しくも同じ姓を持ち、映画『ロスト・イン・トランスレーション』などで知られるソフィア・コッポラも愛用しているとか(本人談)。後で相方さんから聞いたところによると、オークションの最高額は、全作家サイン入りの『こち亀』小説化アンソロジーで記録した13万円だとか。
オークションの途中で相方さんを残して抜け出し、3回目のサイン会へ。今話題の桜庭一樹さんが女性であることは知らなかった。評価急上昇中の道尾秀介さんは、自分より若い好青年。最新刊の『ソロモンの犬』にサインをしてもらう。もう読まれましたかと聞かれて、いえこれからですとごまかす。すみません、これからファンになります。
オークション会場に戻ると、既に15時からのクイズ大会が始まっている。1階に相方さんがいるのに、満席だから2階に行けと言われる。マニアックなクイズ大会の間、相方さんを一人にしてしまったのだった。問題は読んでいなくてもわかるものから読んでいてもわからないものまで様々。このクイズ大会でわかったことは、話題作といえども読んでいない人が結構いるということ。このイベントに参加した人は少なくとも読書が好きなはずだが、自分も含めて話題作すべてをフォローしている人などいない。ミーハーにしか過ぎない自分もある意味安心した。フィナーレでミステリ検定上位得点者の表彰が行われる。トークセッションと重なったため受験しなかったが、受験したところで古今東西のミステリーに通じているわけでもない自分が何点取れたかは怪しい。上位得点者は相当「濃い」ミステリーファンだろう。
終わってようやく相方さんと合流し、池袋駅に向かっているとまた雨が激しくなってきた。一時は晴れていたのに。こんな天気の中、付き合ってくれた相方さんには感謝。全体的には楽しめたイベントだったと思う。次にこのような機会があるのは70周年のときか、それとももっと早いのかわからないが、予算がないとはいえ運営面は改善すべきだろう。余裕のないタイムテーブルも、もっと多くのプログラムを見られるようにしてほしい。って、アンケート出し忘れた。
ところで、日本推理作家協会の大御所トリオ、大沢在昌理事長、逢坂剛前理事長、北方謙三前々理事長の作品を1冊も読んだことがない人は、自分を含めて何人いただろう。