世界遺産 VENEZIA ヴェネツィア

大運河 サン・マルコ寺院と広場

   予定より少し遅れぎみでリベルタ橋を
 渡る。霧の中にヴェネツイアが浮かんで
 い
る。海の中に浮かんでいる。再びヴェ
 ネツイアヘ来れたことの喜びを感じる。

 昼食を済ませた後、皆とヴェネツイアの
 象徴であるサン・マルコ広場へ向かった。

 膝ぐらいの高さの踏み板が道の真ん中を
 どこまでも続いている。

 「明日香ちゃん、この台、何するものか
 わかる?」と大阪からお母さんと参加し
 て
いる小学校5年生の女の子に尋ねた。
 「わからん、おっちゃん知ってる?」
 
「多分だけど、海が満ちて来ると、この
 道路が水に浸かってしまうんだ。その時
 その
板の上を歩くんだョ。」 
 「エー、ホンマ?」
ガイドさんに尋ねた
 ところ、朝方、10cm程水があったと
 いう。ヴェネツイアの風景
のひとつである。
 
 ***

 サン・マルコ広場で皆と別れ、私たちは女房の友人のS子さんと3人でゴン
ドラに
乗ることにした。添乗員のKさんからは、1人1時間、l万リラ(約3千円)
位だろう
と聞いていたが、3人1時間で8万リラ(約2万4千円)と言われ、少々
迷ってしまった。何となく足もとを見られたような感じであった。しかし、ここ
まで来て乗らないのではきっと後悔するだろうと思い、乗ることにした。 ゴンド
ラの船頭さんは若いお兄ちゃんである。何やらイタリア語で話し掛けてくれる

さっぱり解らない。狭い運河、裏町の水路をゆったりと静かにゴンドラが行
く。
海に沈んだ茶褐色の建物の間を縫うようにして進む。絵画そのものである。

『荻須高徳』の世界を思う。
 モーツアルトの家やマルコポーロの家などを巡って、リアルト橋を経て、夢に
まで見た小1時間の旅は終わった。
***

 次の目的地はアカデミア美術館である。地図で見る限り、それ程遠くではなく
15分もあれぼ歩けるだろうということで歩きはじめた。ところが、ヴェネツイア
の道はまことに分かりにくい。細い道から急に広場に出る。だいたいの方向
を定
めて行くと行き止まりの路地である。建物ばかりで見通しがきかないため
自分の
いる場所が分からなくなる。まるで、モルモットの迷路に入ったかのよう
な錯覚
さえ覚える。
 美術館はかなり空いていた。ただ、時間が十分なかったのは誠に残念であった。
ティツイアーノ作の「ピエタ」とヴエロネーゼの「 聖母と聖人」は心に残る傑作
であった。ヨ−ロッパの絵画は宗教に根ざしている。その重みが人々の心を揺さ
ぶる。
キリスト降誕、聖母マリア、最後の晩餐、キリストの復活等々、過去にど
れだけの人々が描き、そして安らぎを与え、その心奥に迫ったか。



狭い路地から突然広場に出る
そこは人々の憩いの場

 ヴェネツイアの街をぶらぶら歩く。ヴェネツイアには車が一台とない。すべて
船か徒歩である。従って交通事故の心配はな
い。街自体それ程大きくないので、
半日もあれば隅々まで十分回ることが出来る。アカデミア美術館を
出た私達は、
とにかくサン・マルコ広場まで行ってみようということで
水上バスで大運河
を渡り、店をひやかしながらブラブラしていると、
「水野さ〜ん」と女性の声。ツア仲間のT子さんである。

「ネェ、ネェ、聞いて下さいョ。私ってホントにドジなんです。さっき、レス
トランでロブスターを食べたんです。」
「エッ!そりゃ最高だ。おいしかったでしょう。」 
「そんなの食べるつもりじゃなかったんですが、店の人が食べろ食べろと言う
ので食べてみようと思ったんです。
値段を見たらえらく安く書いてあるし、変
だなと思ったんですが、でも、
その時、それが100gの値段だということが分
からなかったんです。おいしいには
おいしかったんですが、こんなに大きなも
の・・」と言って手を広げて説明する。

「半分食べて半分残してしまったんです。あまりに大きくて、あとは野菜サラ
ダだ
けです。いくらだと思います?それが7万リラですョ。伝票見た時、思わ
ず目を
疑いましたョ。次の瞬間お金持ってるかなって、スッカラカンになって
レストランを
を出て、今、銀行からお金を下ろしてきたところですョ」と一気
にまくし発てた。
余程ショックだったのだろう。かなり興奮している。
「それでもいい思い出ができたじゃないですか。いつまでも心に残る。ロブス
ター
のヴェニスだと。」皆大笑いである。
「もう一生ロブスターは食べなくていいわ・」
「ロブスターを見るだけでヴェエスを思い出すでしょうネ。」
「エーマー」
「それごらん安いロブスターだ。」再び大笑いであるが、他人ごとだとまこと
に無責任
である。
10分程立ち話をしていたが、
「リド島に行って来るワ。」と言い残し
て、彼女は一人で行ってしまった。ま
ことに活動的なお嬢さんである。

  私たちはサン・マルコ広場を取り囲むように構えている店をブラブラしながら、
私はネクタイを求め、そして、リアルト橋へ行く途中で
女房がこの旅行二本目の
傘を買った。
***   

 今夜はホテルでピ クニックだ。街の惣菜屋で自分たちの好きなものを買って来て、
ホテルのベッドの上に並べて食べるのだ。
チーズ、ハム、サラダ、牛乳、パンなど
を仕入れ
て来る。準備ができてしばらくすると、ツア仲間のSさんとT子さんが
「遅くなってすみま
せ〜ん。」と言って私たちの部屋へやって来た。
日本を発つ時、免税店で広島の酒『酔心』を買ってきていた。封切りである。
誠に簡素だが、レストランで食べるのとはひと味違った楽しいパーティである。
「乾杯!」                      、
酒が五臓六腑にしみ込んでいった。