69.エステル

●聖書箇所[エステル記全体]

 エステルはペルシャ王の妃で、ユダヤ人です。両親は幼くして亡くなり、宮殿の門番でいとこのモルデカイに育てられました。
 ある時、王はハマンのことを大変気に入り、国中の役人のボスに任命します。彼は高慢であり、自らへのごますりと崇拝とを周囲に要求し始めます。ところがモルデカイは決して頭を下げません。「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の例えどおり、ユダヤ人すべてが憎くてたまりません。彼は王に取り入り、ユダヤ人虐殺命令を出させることに成功します。これを知ったモルデカイは彼女に王へのとりなしを依頼します。悩みました。呼ばれてもいないのに王の前に出ることは死を意味しています(そういう時代であったのです)。勇気を出して言いました。神さまはユダヤ人を祝福し、彼らは九死に一生を得ました。エステルの勇気はいまでも人々から称えられています。
 さて今回は彼女の行動を参考にして、難しい出来ごとに直面した時の正しい決断の仕方について学んで行きましょう。

愛と善意の神は私に良いことをしてくださる、と信じる

 モルデカイは助命の嘆願をしなさいと彼女に勧めていますが、もしそうしたら自分がユダヤ人であることが分かってしまいます。ハマンの作戦によって、王はユダヤ人を羊の面をかぶった狼の如き悪人と思い込まされているときに、いままでペルシャ人のように振る舞っていて、突然名乗り出ることは余計不信感を持たれるでしょう。ちゅうちょする彼女にモルデカイは重ねて決断を迫ります。ついに神に自分のいのちと人生とを委ねる決心をします(4:16)。
 私たちはいろいろな場面で正しいと分かってはいるが難しい決断を迫られます。そのときにイエスさまをくださったまことの神を信じて、つまり最終的には良い結果を下さると信じなければなりません。

 これは正しい決断を下すための基礎です。

罪と戦う姿勢を持つ

 罪の正体とはいったいなんでしょうか。それはエゴイズム。これと戦わなければなりません。なぜなら罪を心の中にそのままにして正しい決断はできません。さて戦えば勝つこともあれば負けることもあります。勝てば「ハレルヤ!」。では負けたら?心配要りません。十字架があります。十字架の上にあなたの失敗は釘付けられました。信じてください。そして復活、あなたにもう一度の挑戦を薦めています。これが福音です。もう一度言います。自分の中にあるエゴイズムと戦う姿勢が大事なのです。あとは神があなたを応援してくださいます。ちなみに彼女はモルデカイの愛を存分に受けて満ち足りてはいましたが、決して裕福な生活をして来てはいなかったでしょう。ところが王妃ともなれば、生活レベルは一変します。かつての貧しい生活の記憶は次第に薄れ、新生活への愛着は日増しに強くなります。私たちは生活レベルを落とすことには耐えられないものです。エステルの心に以前の生活に戻ることへの恐れがなかったとだれが言えるでしょうか。つまりエゴイズムが彼女の心の中には生じていました。「自分のいのちが安泰であればいいんじゃないか」というような思いです。そこで3日間の断食を自分自身、待女たち、そして同胞であるユダヤ人たちに提案します。これは弱さを認識した自分自身に対する励ましでもありました。断食と祈りの中でエステルは葛藤します。エゴと神のお心とが激しくぶつかり、火花を散らします。心は右に左に大きく揺れ動きます。しかし彼女には決して無視できない強い印象と思いとが残りました。これこそ聖霊さまがエステルだけでなく、あなたにも与える確信です。祈ることによってあなたの中に沸き上がる思いを尊重しましょう。そのとき同時にあなたは力をもいただいて罪に勝つことができます。まことの神はあなたの安全と祝福とを保証してくださいます。エステルに対してしてくださったように。

みことばが支持しているかをチェックする

 みことばに一致するかどうかを確かめましょう。モルデカイは聖書をよく学んでいました。ユダヤ人は決して減びることはなく、かつこのユダヤ人から世界を救うメシアが生まれて来る、以上のことは神の決定であることを彼はよく学んで知っていました。もしエステルがここで立ち上がらなければ、きっと別の人を立てて、王の決定を反故にしユダヤ人は結局救われるはずです。しかしその時彼女は永遠の恥をかくのです。みことばに一致していることならその決定は安全です。あなたに祝福を与えます。
 どのようにしてみことばは与えられますか。個々のみことばが直感的に与えられる場合もあれば、聖書の持っている思想やアイディアが示される場合もあります。このときサタンはあなたにみ心に反した間違った道を選ばせようと、心の中に激しく働きます。「神の考えではなくて自分の思い通りにした方がいい」というふうに。しかしみことばこそがあなたを真に幸せにして行くことを覚えてください。

環境上の証拠を探す

 環境上の証拠を求めましょう。エステルは王に最も近いユダヤ人です。しかも当時王から大変気に入られていました。もちろんこのことが政治への口出しを甘く見てくれる保証にはなりませんが。
 さていよいよ勇気をもって王の前に出ました。王ははたして金のしゃくを差し出しました。これはいのちが助かるルールです。さあここでドアが少し開きました。神を愛して従う者には少しずつにしろ確実に道は整えられます。しかしなぜか彼女は願いをすぐには言い出しません。彼女は神さまに委ねています。私たちは何ごとも進んでいないかのように感じる時間を経験するものですが、決して神が寝ているわけではありません。はたしてそのとき王は一時的に不眠症にかかります。年代記をもって来させ部下に読ませます。そうするとモルデカイのことが載っていました。かつて王に対して暗殺計画があり、モルデカイがそれを知り、エステルを通して通報し事なきを得ました。そこで記憶をたどってみますが、褒美をやったかどうか思い出せないのです。ハマンに尋ねますと、自分自身のことかと勘違いをして、たくさん褒美を出すよう提案するのです。こうして王のユダヤ人への偏見は消えて、ドアは完全に開かれました。
 ある決断をしても道が全然開かれないのはみこころではない可能性は大きいのです。神は一歩一歩あなたを導いてくださる方です。もちろん単に時期の問題の場合もあるでしょう。それならなおのことしばらく待ってから一歩を踏み出すべきでしょう。正しい決断なら神が確実にドアを開いてあなたを前進させます。

人の助言を尊重する

 人の助言を軽んじないようにしましょう。助言を尊重するとは心ずしも賛成することではありません。時々刻々変わる状況の中で、完全無比の助言をする能力をいかなる人も持たないでしょう。正しい決断のできる人は2つの優れた能力を身につけています。1つは人の助言を冷静に聞く謙虚さであり、2つは信仰によって主体的に消化、発展させる積極さです。
 さてハマンはもう少し知恵があったら、身を減ぼすことはなかったでしょう。というのは出エジプト記第17章14〜16節には、アマレク人はイステエル人と戦っても勝ち目はないと書いてあり、このことを妻や友人たちは知っていて、アマレク人ハマンに忠告したからです。高慢、不遜、不信仰な者の末路は哀れです。

 一方エステルはモルデカイという尊敬する人を助言者に持っていました。幸いでした。

平安があるかどうかを確かめる

 一度決断してみて平安があるかどうかをチェックしましょう。心の中に平安があれば、神のみ心であり、その願いは成就します。
 エステルは2つの決断をしています。断食と王の前に出ることとです。ともに良い方向へ進み、み心であると確信していますから、おのずと心と行動に余裕があります。王に願いごとを言うように言われて慌てることもありませんでした。一晩待ってくださいと言っています。平安と確信とがあれば決して慌てることはありません。平安を得ようとするなら、ひとまず決断してみましょう。平安は力強い味方です。エステルはこうして同胞のいのちを救い、以来プリムの祭は彼女の勇気を称え続けています。そして私たちクリスチャンも称えます。というのは新しいいのち、永遠のいのちはメシヤ・イエス・キリストから与えられ、その彼はこの特に減びから助かったユダヤ人の子孫だからです。正しい決断はあなた自身を生かし、隣人や兄弟姉妹を生かし、神さまの栄光を永遠にまで現します。

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