【子育て(赤ちゃんや小さな子ども)】メニュー
前(「母性神話」)へ        次(伝えられたもの、伝えているもの)へ


 子育て(赤ちゃんや小さな子ども) 
4 「三歳児神話」

では、次に「三歳児神話」について見てみましょう。

「三歳児神話」とは、
「子どもが三歳までは家庭の母親のもとで育てないと、
 後々取り返しのつかないダメージを子どもに与える」というものです。

これも、科学的に証明されているわけではなく「神話」なのですが、
それでも結構信じられているため、子どもを保育所に預けようとしたときに、
「三歳までは母親が自分で育てないと、子どもがゆがむ」と言われたり、
「子どもがどうなったとしても、自分のやりたいことさえできればいいのか!」
などとまわりから非難されてしまうのです。

つまりこの「三歳児神話」によって、母親だけが、
子どもの成長にとって大切な人間なんだということにされてしまい、
母親と子どもだけを、家庭に閉じこめることになってしまうのです。

その結果、子どもを預けて仕事をする母親は、
子どもに悪影響があるのではないかと不安になったり、
自分は母親として無責任なのではないかと罪悪感をもってしまいます。
一方、子どもと家にいる母親は、自分しか子育てをする人間はいないし、
その自分の関わり方が子どもの人生を決めるのだと、
必死にならざるを得なくなるのです。

また、三歳までが大切だと力説されるために、
母親の焦る気持ちを引き出してしまうことにもなってしまいます。

子どもに何か困ったことが起きると、すべての責任が母親だけにあると受け取られ、
母親の何か、たとえば仕事をしているとか、関わり方が厳しすぎるとか甘すぎるとか、
とにかく何か理由を見つけられ、母親だけが責められてしまうことになるのです。

               

実は、この三歳児神話を生み出すもとになった観察や実験の報告があります。

スピッツの「ホスピタリズム」についての論文や、
ボウルビィの「母性剥奪(喪失)」についての論文、
また、ロレンツのハイイロガンの「刷り込み」の研究や、
ハーローのアカゲザルの実験結果なども利用されることがあります。

しかし、実験や観察の結果をどう考察するのかは、
その人の価値観や思い込みがかなり反映されてしまいますので、
実験の方法や考察の仕方によっては、全く違う結果が導き出されるものです。

しかも、スピッツやボウルビィの出した結論を、
使う側がまた、歪曲して使っているようなところもあります。

結論を出した人やその結論を使う人の思い込みにより導き出されたものは、
科学的な根拠にはなり得ないと考えます。

               

本来子どもは、まわりの人たちと、さまざまな関係をつくりながら育っていくものです。

母親との関係も大切だとは思いますが、
それと同じくらい、他の人との関係も大切なものです。
大切なのは、「母親かどうか」ということよりも、
まわりの人たちがその子と、どんな関係をつくっていくのかということです。

また、なるべくたくさんの人が子どもと関わっていく方が、
誰かひとりに負担がかかることもないですし、
子どもも幅広く、いろいろなものを受け取ることができるのではないでしょうか。

また、子育てに遅すぎるということはありません。
三歳までに完璧なものを作り上げていないと、後々とんでもないことになる、
などということはないのです。

もし「神話」が真実なら、何らかの理由で赤ちゃんのときに母親と別れた人は、
全て、とんでもない人生を送ることになります。
しかし、そのような状況の中でも、一生懸命に自分の人生を生き、
幸せになっている人はたくさんいます。

               

子育ては、少しずつ少しずつ長い時間をかけて、子どもと一緒に
人間関係をつくりあげていく過程です。
いつからでも、何かに気づいたときから変更可能なのです。

小さい頃に時間を戻すことはできませんが、
その子との関係性のあり方に変化を起こすことは、いつでもできるのです。


【子育て(赤ちゃんや小さな子ども)】メニュー
前(「母性神話」)へ        次(伝えられたもの、伝えているもの)へ