症例4 複視の症状で発見された脳動脈瘤50才女性がある日突然ものが二重に見えはじめました。様子を見ていましたが、症状の改善なく、私の病院を受診されました。CTスキャンを撮ると動眼神経(目を動かす神経)の近くに円形の異常な陰影を認めました。造影剤を使用して詳しく見ると、なんとこれは脳動脈瘤(脳の動脈にできたこぶ)であることが判明しました。脳動脈瘤は破裂してくも膜下出血を起こすまではほとんど症状を認めませんが、この女性の場合未破裂動脈瘤(まだ破裂する前の動脈のこぶ)がたまたま目の神経を圧迫したため早期発見につながりました。このため、くも膜下出血を起こす前に動脈瘤を手術で治療することが出来ました。
脳動脈瘤は、くも膜下出血の原因のなかで最も頻度の高いものです。以前は、血管造影というたいへんつらい検査を受けないと発見されませんでした。しかし、最近は3D−CTやMRI等の検査で未破裂動脈瘤がたくさん発見されています。未破裂で発見されればくも膜下出血になる前に手術で破裂しないように出来ます。くも膜下出血を起こせば、死亡するか寝たきりになる可能性がきわめて高い病気です。破裂する前に発見することが極めて重要です。この女性のようなラッキーもありますが、早期発見のためには積極的に検査を受けることしか方法がないと思います。