第149回

このままの自分でいいのだ

01.6.29

このままの自分でいいのだ

最近、医療の現場でよく感じることがある。
患者さんは何らかの形で病んでいるのだが、その病気の程度以上にストレスを感じ自分を否定して、ノイロ−ゼにおちいったり空回りしている患者さんが大変多いように思う。向上心はよいことであるが、とかくこれは自己否定が伴いやすい。自分の現実に満足出来ないという気持ちが生じやすい。「このままではだめだ」、「今の自分を何とかしなければ・・・」などという焦りの気持ちになっていることが多い。こうなってしまえば、自己否定を出発点としているため何もいいものは生まれてこない。結局「自信がない」ということから不安神経症の様になってしまっている患者さんが大変多い。こういう患者さんには「このままの自分でいいじゃないですか」という言葉をかけたくなる。「このままではいけない」ではなく「このままの自分でいいのだ」と考えて欲しい。これは自己肯定の考え方である。「これでいいのだ」は向上心を捨てることとは違う。自分の現実に寛大であること、自分の現実をゆるすこころである。そういう自分をおおらかに愛し、肯定するこころである。
本当の向上は実は自己肯定から生まれてくるものである。むしろ理想の自分を意識し、現実の自分を否定することによって向上は妨げられるのである。
毎日の診療の中で「このままの自分でいいのだ」と思って欲しいことがよくある。

もどる