第15回

顔がピクピク動いたり、顔が痛いとき

00.6.21

00.6.21
診療日記

今日、左顔面のけいれん(ピクピク動く症状)のある50才台の男性の患者さんが受診されました。
実はこの患者さんは昨年も一度受診されていました。
やはり、左顔面のぴくつきで受診されていました。
この時、 MRI の検査を勧めましたが、患者さんが検査はしたくないとのことで保留になっていました。
今回は、やや症状がひどくなったことや周囲の人が数人脳梗塞で倒れたということもあり、心配になって再度受診されました。
今日はこの顔面のぴくつきの原因および顔面の痛みについて書きます。

 顔が勝手にピクピク動いたり、突然激しく痛んだりするときには、脳神経の病気が疑われます。  
「顔面神経」は顔面の筋肉を動かす神経です。「三叉(さんさ)神経」は顔の痛みを感じる神経です。
ですから、顔が痛いときに「顔面神経痛」というのは間違っていて、ほんとうは「三叉神経痛」というのです。
顔面神経と三叉神経は、脳の脳幹部から出て、頭蓋骨を抜けてから、顔面に広がります。これらの神経は左右1本づつあります。


顔がピクピク勝手に動くとき

 顔が勝手にピクピク動いてしまうという症状は,中年から高齢者に多く見られる症状です。
この症状を起こす病気は2つの病名が考えられます。
ひとつは「顔面けいれん」で,もう一つは「眼瞼(がんけん)けいれん」です。
似たような病名ですが,眼瞼けいれんはまぶたにだけ動きがあるもので、顔面けいれんは顔の片側全体が動くのが特徴です。
「顔面けいれん」は、最初は目尻がピクピクすることから始まって、病気が進むと口元までピクピクします。
この病気は,顔面神経が脳の血管で圧迫されて起こるので、脳神経外科で手術することによって完全に治ることが多いようです。
圧迫血管の確認のためには、MRI 、MRA(MRI を使った血管撮影)を撮れば診断できる場合が多いです。
あまり病気が進行すると顔面のマヒなどがでて手術しても治りにくくなることがあるので、早めに脳神経外科の外来で相談してください。
眼瞼けいれんのほうは、手術の対象にはならないことが多く、内科的な治療をすることになると思います。


顔がとってもいたいとき

顔がいたい時は、いろいろな病気が考えられます。
なかでも最も痛いのが、三叉神経痛です。(顔面神経痛とはいいません)
ひどいときには、冷たい風にあたったり歯をみがいたりすると、突然、ナイフで顔を裂かれたり、キリで顔をえぐられたりするような激しい痛みが起こってしまいます。
三叉神経痛が、あごのあたりに生じたときには、歯の痛みとまちがえられて歯を抜いてしまう人も少なくありません。
これも三叉神経が脳の血管や脳腫瘍で圧迫されて起こる脳神経の病気ですから、脳神経外科の手術で治すことができます。


手術を受けるか当然悩みます

症状が軽くて日常生活にぜんぜん困らないときには、ほっておいてもかまいません。
命をとられるような病気ではないのです。
三叉神経痛はカルバマゼピンという薬でおさえることもできます。
(胃が悪くなったり、ふらついたりすることもあり飲みやすい薬ではありませんが)

けれども、顔が毎日ひどく痛かったり、人前でかってに顔が動いてしまうのはつらいものなので、手術治療を受ける人も多いのです。
がまんできないときは手術を受けましょう
もちろんどの血管がどの神経をどういうふうに圧迫しているかMRI 等で詳しく調べてから検討する必要があります。


手術の効果と合併症

 手術するとだいたい95%くらいの人がほぼ完全に治ります。20人にひとりくらい手術しても止まらない人がいるかもしれません。最近の脳神経外科の技術はとても進歩しているので,手術で後遺症がでることはないと考えてもよいでしょう。けれども手術でおこる可能性のあるのは,めまいや手術したほうの耳の聞こえが悪くなることです。このことについては,手術をしてくださる先生から十分に説明を聞いて,治療を受けるかどうか自分で決めることがたいせつです。


まとめると・・・

顔面けいれんは顔がかってにピクピク動く病気で、三叉神経痛は顔面が激しく痛む病気です。
 この2つの病気は、同じ様な原因で起こることが分かってきました。
そして脳神経外科の手術によって治る病気です。

 顔面神経と三叉神経は脳の脳幹部というところから出て、頭蓋骨の中を通ってから、顔に広がります。
これらの神経が脳からでたすぐ後で圧迫されると、顔面けいれんと三叉神経痛が起こるのです。
神経を圧迫するのは、脳血管と脳腫瘍です。
動脈がドンドンと神経をたたくので、顔がピクピクかってに動いてしまうのです。
顔の痛みも同じように、動脈がドンドンと神経をたたくので、ビビッと痛みます。
この脳動脈を神経から手術ではなしてあげると、顔のピクピクした動きがぴたっと止まります。
顔面けいれんと三叉神経痛は、まれにですが良性脳腫瘍の圧迫で起こるので、MRIという検査で、腫瘍がないかどうかを確かめておく必要があります。
MRIは磁石を使って脳の断層写真をとる検査ですが、30分くらい横になっているだけですぐに終わります。

もどります