診療日記
00.7.23
65歳のOさんは糖尿病でインスリン治療中でしたが、
あまり病識がなく食餌療法などはまじめにしていませんでした。、
ある日自宅の庭で倒れているのを家族に発見され、
家族がかかりつけの医師に電話をして往診を依頼しました。
意識状態が悪かったため、最初はインスリンを使用しているための
低血糖性昏睡かとおもわれましたが、血糖は150で異常なしでした。
よく見ると右の片麻痺があり、やはり脳卒中を疑いました。
この時点で私に紹介入院となりました。
救急車で搬送されたときの症状は、昏睡状態、右片麻痺でした。
CTスキャンを撮りましたが、明らかな異常は認めませんでした。
この時点で出血ではないことがはっきりしましたので、
当然、脳梗塞ではないかと思われるわけです。
この脳梗塞の中でも塞栓症といわれる心臓が原因で脳に血栓がとんでいくタイプと、
脳の動脈硬化が原因で脳の血管がつまるタイプがあります。
このOさんは糖尿病が原因で起こるアテロ−ム血栓性の脳梗塞と思われました。
MRI で詳しく調べますと、やはり左の内頚動脈から中大脳動脈にかけて
極端に血流が低下していました。
アテロ−ム血栓性の脳梗塞と思われました。
しかし、MRI 上は左の大脳半球に小梗塞を認めましたが、
昏睡に近い意識障害がでるような明らかな脳梗塞は認めませんでした。
この状態は、左の大脳の広範な虚血状態で
まだ完全な脳梗塞になっていないものと思われました。
すぐ、高気圧酸素治療器に患者さんを入れました。
すると、高気圧酸素治療器の中では、この患者さんはしっかりと目を開け、
よく動きます。
明らかに意識状態が改善していました。
酸素治療器から出すとまた意識状態はもとのように悪くなってしまいました。
しかたなく、1日2回の酸素治療を行うことになりました。
このOさんは少しずつ意識状態が良くなってきました。
全部で20回高気圧酸素治療を行い、自力で食事ができるようになりました。
脳梗塞は命の心配をするような大きなものに進行せずに済みました。
高気圧酸素治療が極めて有効であった症例です。
この患者さんは今後リハビリテ−ションで家庭復帰をめざすことになりました。
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