68歳の男性のNさんは、平成10年10月下旬自転車より転落し頭部を打撲しました。その後より頭痛あり、11月11日嘔吐発症、11月25日受診され頭部CTスキャン上、慢性硬膜下血腫の診断でK医療センタ−を紹介しました。同日手術が行われましたが、慢性硬膜下水腫の診断でした。術後症状は軽快しました。 その後経過は順調でしたが、平成11年9月24日より食欲低下、10月14日入院となりました。このとき、入院時検査で肺癌が発見されました。10月17日より意識障害が進行しました。MRI上慢性硬膜下水腫の増大認め、再度、 K医療センタ−にて髄液検査がなされました。結局髄液の中から肺癌が発見されました。肺癌による癌性髄膜炎と診断されました。 抗がん剤の硬膜下腔への注入を行ない、硬膜下水腫のコントロ−ル目的にてSPシャント術(硬膜下にたまった液体を抜くためのチュ−ブを入れたままにすること)を施行し退院となりました。しかし、徐々に症状悪化し平成12年5月に死亡されました。 この患者さんは、自転車で転倒し頭部打撲したために外傷性の異常と思われましたが、実は肺癌の転移による癌性髄膜炎でした。肺癌の患者さんの脳転移や癌性髄膜炎は時々経験しますが、たまたま外傷と重なったために外傷性の異常と思われてしまいました。頭痛や意識障害の原因のなかにはこういった癌の転移が原因のこともあるのです。 |
頭の病気は外傷によるものと思われましたが、実はこの肺癌が脳の周りの硬膜下腔に転移したものということが分かりました。 |