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       6月18日診療日記 
      痴呆症とうつ病 
      今や痴呆症は医療や介護の現場でたいへん問題になっています。 
      しかし、「痴呆症」と間違われる病気に「老人性うつ」があります。 
      これらの疾患は似ている症状がありたいへんまぎらわしいのです。 
      介護保険はすでに始まっており正確な診断が必要です。 
      先日診療した患者さんは70歳主婦の方でした。 
      最近外に出るのがおっくうに感じ、家事をする気もない、 
      買い物に行っても何を買っていいか分からない、 
      頭は重く、ふらふらする等の症状が出てきたそうです。 
      睡眠もとれず近くの内科に受診し睡眠剤を処方されるが、 
      内服してもよく眠れず、一日中ボ−ッとしてすごすようになった。 
      だんだん話さなくなり、日常の家庭生活の困難になってきた。 
      夫に連れられて神経内科を受診し、痴呆のテストで高度の点数となり、 
      「アルツハイマ−病」と診断され内服処方をもらいました。 
      しかし、症状は治らず、先日私の病院を受診されました。 
      診察の時表情がなく、何をたずねても「わからない」としか答えませんでした。 
      患者の表情のない様子から「うつ病」ではないかと思い抗うつ剤を処方してみました。 
      2週間目には表情がよくなり家庭内の生活も普通に出来るようになりました。 
      高齢者のうつ病は痴呆症に似た症状を出すために注意が必要です。 
      注意力の低下から、一度聞いたはずの内容を「わからない」等と答えることがあり、 
      痴呆症と間違われるのです。一見痴呆症の記憶障害のようにみえるのです。 
      見分け方としては、「痴呆症」に比べて、「うつ病」は発症がより急のことが多い。 
      ニコニコするなど多幸感の人が少なくない「痴呆症」に対して、 
      「うつ病」は表情がなく何も話さない。  
      「痴呆症」では質問がわからないと言い訳したりはぐらかしたりするが、 
      「うつ病」ではわからないことを認める。  
      「痴呆症」の妄想は他人を攻撃することがあるが、「うつ病」では自分を責める。  
      うつでは食欲が減退することが多い。  
      痴呆が治ったという話のなかには「うつ病」を「アルツハイマ−病」と診断していることが多いのではないかと思われます。
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