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       診療日記 
      00.7.3 
      
      72才の男性のAさんは昼食中突然激しい頭痛が起こりました。 
      救急車で搬送されました。 
      意識ははっきりしており、我々の質問にきちんと答えることが出来ました。 
      血圧は200/115でした。 
      CTスキャンでは、くも膜下出血を認めました。 
      意識状態が良いことから手術の適応があると判断し、 
      すぐに手術目的にてT病院に紹介しました。 
      術前検査の血管造影にて動脈瘤が確認され無事手術が施行されました。 
      術後の合併症もなく元気に退院されました。 
      この患者さんは後遺症もなく元気に退院されましたが、 
      この病気は命を落としたり、かなりの後遺症を残す人も多い病気です。 
      くも膜下出血とは 
      この病気のほとんどは、脳の動脈にできた風船のような瘤(こぶ)、 
      すなわち脳動脈瘤の破裂によって起こります。 
      症状は非常に特徴的で、「突然起こる激しい頭痛」がこの病気の際立った特徴です。 
      嘔吐や吐き気などをともなうこともしばしばです。 
      患者さんによって、その表現は異なりますが、 
      たとえば、「後ろから金づちでなぐられたような」とか、 
      「後頭部に突然ガーンときた」というような言い方で訴えられることが多いようです。 
      いずれにしても、通常みられるような頭の重い感じとか、 
      慢性的なズキン、ズキンとした痛みとは異なるようです。 
      しかし、人によっては、特に、高齢の方などでは、訴えが軽く、 
      吐き気のような消化器の病気を思わせるような症状だけを訴えて内科を受診されたり、 
      ただ単に急に倒れたというようなこともよく見られますので注意が必要です。 
      一度、破裂した動脈瘤は、1〜2週間以内に再破裂することが多く、 
      診断がつき次第、緊急手術によって治療することが最良の治療となります。 
      しかし、時には、出血がひどく、命を失ったり、救われても、大きな後遺症を残し 
      社会復帰が困難になる患者さんが多いのも事実です。 
      破裂してしまった後ではなかなか社会復帰まで回復する患者さんは少ないと思います 
      このような、動脈瘤破裂によるクモ膜下出血を 
      未然に予防する方法はないのでしょうか。 
      実は幸いなことに、現在では、MRIあるいは 
      これを用いた血管の検査(MRAといいます)により、 
      血管の中へ管を入れる必要もなく、外来で、30分程度の時間で 
      ある程度の大きさの動脈瘤を発見することができます。 
      見つかった動脈瘤は、全て手術で治療するわけではありませんが、 
      できるかぎり手術(脳の動脈にクリップをかける処置)により 
      破裂を未然に防止することが望ましいと考えられています。 
      一般には、このような健診の方法を「脳ドック」と呼んでいます。 
      まだ全ての動脈瘤がこのMRAで見つかる訳ではないですが、 
      最近はかなり精度が上がっており、小さな動脈瘤も発見できる様になってきています。
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