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       診療日記 
      00.7.5 
      
      薬剤性肝障害を起こした84才の女性 
      84才女性のSさんは呂律不全、右の片麻痺で発症し入院となりました。 
      MRI 上、脳梗塞によるものと診断されました。 
      左の大脳白質部に新しい梗塞を見つけました。 
      入院治療にて症状は徐々に回復し歩行可能となり、食事も自力摂取が可能になりました。 
      無事に退院とになりましたが、再発予防に脳梗塞の場合、 
      通常抗血小板剤(血の固まりを防ぐお薬)を投与します。 
      このSさんはご高齢ではありますがお元気であったため、 
      抗血小板剤の内服を開始して退院としました。 
      外来でもお元気そうでしたが、念のため血液検査を施行しました(新しく始めた薬の 
      副作用チェックのため、退院後はなるべく血液検査をするようにしています)。 
      すると、入院していたときは全く異常なかった肝機能が著明に悪化していました。 
      まだ自覚症状がでる前に異常が発見されましたので、 
      すぐに自宅へ電話して再入院をしていただきました。 
      入院後、原因と思われる薬剤(抗血小板剤)を中止いたしました。 
      入院安静、肝庇護剤の点滴、原因薬剤の中止にてしばらく様子を見ました。 
      幸い肝機能は2週間程度で回復し、元気に自宅退院することが出来ました。 
      このように、薬剤による肝障害等の副作用は時々経験することです。 
      100%安全な内服はありませんが、病気を治療したり再発を防ぐためには 
      薬剤は欠かせません。 
      しかし、自分の患者さんに薬剤の副作用が出たときは、医師としてつらいものです。 
      少しでも副作用による障害を少なくするためにはなるべく頻回に患者さんの診察をして、 
      副作用の兆候を見つけなければなりません。 
      また、副作用情報に注意して我々医師がしっかり勉強しなければならないと思います。 
      薬剤を出しているからには副作用チェックは医師の責任です。 
      今回の症例は幸い事無きを得ましたが、いつも今回のようにうまくいくとは限りません。 
      十分注意をして診療しなければならないと思います。
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