診療日記
00.7.8
食中毒から身を守る方法、知識
1.キッチン道具の殺菌について
細菌に汚染された魚や肉を食べて起きる食中毒を一次汚染による食中毒といいます。
これらの魚、肉などを調理した包丁やまな板等の器具から
ほかの食品に細菌が付着することを二次汚染といいます。
食中毒はこの二次汚染によって多く発生します。
<まな板の殺菌>
まな板は洗浄剤を使用してタワシでよくこすり、水で洗った後、
塩素系殺菌剤に10分間浸してから、よく洗います。
また、細菌は乾燥に弱いので、よく乾燥させて保管します。
<ふきんの殺菌>
洗浄剤を使って洗い、水洗後、塩素剤に十分浸し、水洗いしてから乾燥させます。
<包丁の殺菌>
包丁は刃の付け根部分が汚れやすいので要注意です。
煮沸するか、熱湯に浸すと、殺菌出来ます。
その後は、柄は、よく乾燥させることが大切です。
刃の部分はよく洗っておけば心配ないようです。
2.冷蔵庫を過信しないこと
一般に10℃以下では、ほとんどの細菌は活動が抑えられるために、
あまり繁殖しないといわれます。
冷蔵庫が役に立ちますが、過信はしない様にして下さい。
冷蔵庫内でも繁殖する低温細菌もいます。
冷蔵庫に食品を保存する場合の注意
(1)容器に入れるかラップに包む。食品の2次汚染を防ぐ。
(2)暖かい食品は冷ましてから入れる。
(3)食品のすき間をあける。(冷蔵庫内の温度上昇を防ぐため)
(4)清潔にしてから入れる。
3.加熱は有効か?
食品を十分加熱すれば、熱に弱い細菌は死滅します。
ですから、一般的には、加熱することで食中毒を防ぐことができます。
しかし、黄色ブドウ球菌やある種の菌がつくる毒素(エンドトキシン)は、
100度で加熱しても毒性が失われません。
このため、食品中に毒素がたまった後では、、加熱して菌が死滅した後でも、
この毒素のために食中毒はおこります。
加熱は食中毒を予防するのに大変有効な方法ですが、
加熱だけで全ての食中毒を防ぐことは出来ません。
細菌による汚染に注意し、調理したらすぐに食べることが大切です。
4.冷凍庫で細菌は死ぬか?
食品の鮮度を保つために冷凍庫が利用されますが、注意しなければならないのは、
冷凍しても細菌は死なずに生き残ることです。
食品が解凍されて温度が上がれば、細菌は再び増殖し、
食中毒を引き起こす原因になります。
冷凍庫での保存は、どのような細菌も増殖出来ないので、食品の保存法としては
安全ですが、殺菌や菌数減少のための方法ではないことを知っておくべきです。
5.電子レンジで細菌は死ぬか?
電子レンジは加熱するための器具ですが、同時に食品の殺菌にも利用できます。
マイクロ波は菌体を構成している核酸やたんぱく質を変性させるからです。
ただし、細菌はマイクロ波によって死滅しても、芽胞をつくるボツリヌス菌、
セレウス菌、ウェルシュ菌は芽胞の形で食品中に生存します。
また、黄色ブドウ球菌などがつくる耐熱性毒素は破壊されません。
さらに、加熱ムラができることがありますから、
電子レンジの殺菌効果を過信しないようにすべきです。
6.レトルトパウチ食品や真空包装食品は安全か?
レトルトパウチ食品は120℃で4分以上の加圧加熱殺菌した食品です。
この方法は、ボツリヌスA型細菌の芽胞を死滅させることが出来るということです。
無菌状態になっており、安全性は高いと言えます。
ところが、真空包装はレトルトパウチ食品の様に一定の規格はありません。
真空包装といいっても実は完全な真空ではなく、わずかな酸素が残っています。
また十分な加熱殺菌がなされているとはいえません。
真空包装は食品はレトルトパウチ食品とは基本的に異なることを
認識しておく必要があります。
7.卵で起こる食中毒について
卵の殻にはサルモネラ菌が付いています。
サルモネラ菌は鶏が持っていて、それが卵を介して人に食中毒を起こさせます。
新鮮な卵を割って、その場で生で食べるのなら、黄身の部分に少量のサルモネラ菌が
いても、発病させる程の菌数にまで増殖してないので、ほとんど問題ありません。
ところが、卵を割って器に入れたまま放置しておいて、
それを生でたべるのは非常に危険です。
サルモネラ菌が増えるからです。
割って1〜2時間程度ならさほど増えませんが、半日以上たつと相当繁殖します。
実際、朝に割った卵を器に入れておき、
それを夕方に生で食べて食中毒を起こして死亡した例もあります。
いったん殻を割っても冷蔵庫に入れておけば、多少繁殖は抑えられますが、
安全とは言えません。
この場合も加熱調理して食べるべきです。
参考文献:感染症から身を守る本 岡部信彦
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