第4回

顔面の浮腫で発症したあと、黄疸が出現した男性

00.4.11〜26

4月11日診療日記

顔面の浮腫で入院したSさんは、入院後黄疸が出ました。
黄疸の原因をいろいろ調べました。

血液検査上、閉塞性黄疸の所見でした。MRCP(MRIを使った胆管膵管造影)上、総胆管の末端に狭窄病変を確認しました。

総胆管結石を疑う所見ではなく、やはり悪性病変を疑う所見でした。

この患者さんは、以前脳塞栓症で右片麻痺、失語症があり、妻の介助なしには社会生活、家庭生活が送れない方です。

残念ながら、今回は悪性疾患が出てしまいました。本日、ERBD(内視鏡的逆行性胆管ドレナージ)チューブ挿入のため、他の病院に紹介しました。挿入出来ないときは、PTCD(経皮経肝胆道ドレナージ)チューブ挿入にて減黄(黄疸を減少させること)するしかなく、失語症のあるこの患者さんにとって、大変つらいものになってしまいます。(PTCDチューブでは管が外に出るため、十分な食事は出来ないし、退院するにもチューブをつけたままの退院になります。当然長期生存は望めません。)

幸いなことにERBDチューブがうまく挿入できました。これで、外に胆汁を出すことなく、減黄することができます。

しかし、総胆管末端の癌と思っていましたが、残念ながら、膵臓癌であることがわかりました。膵臓癌の方がはるかに予後が悪いのです。

まだ、奥さんにも本当の病名は告げていません。残りどれくらい生きられるかわかりませんが、あまり苦しまないようにしてあげたいものです。

そういう意味では、今日ERBDチューブが入ってくれたのはよかったと思います。

4月13日診療医日記

今日は残念です・・・・・

4月11日に書いたSさんですが、今日、腹部超音波にてせっかく入れたERBDチューブが機能してないのがわかりました。

おそらく、つまってしまったのだと思います。黄疸は進行しています。

肝内胆管の拡張も悪化していました。

再度チューブを入れる目的で消化器外科にだしましたが、残念ながら再挿入は困難でした。

直接胆嚢にチューブを入れるしかないと思われます。

膵臓の酵素もどんどんあがっています。早い時期に急変する可能性が出てきました。

残念です。私は何もしてあげられません。悲しいです・・・・
小さな小さな癌なのに出来た場所が悪すぎます。医療の限界感じます。

今日はつらいつらい一日でした。

4月26日診療日記

今日はうれしい話です。

この前、チューブが入らなくて黄疸がひかず、外からチューブを入れるしかないと思っていたSさんですが、出血傾向がでて外からの減黄もできない状態でした。

しかし、再度、ERBDチューブの入れ替えにチャレンジしましたところ、今度はうまくいきました。その後、どんどん黄疸は減少し全身状態が良くなりました。

明日は元気に帰ってきます。しばらく療養したら、自宅に返すことが出来そうです。
病気が癌なので、長くは生きられないと思いますが、残りの余生を苦しむことなく、元気に過ごしてもらいたいと思います。

4月27日診療日記

今日は、Sさんが帰ってきました。思ったより元気です。いつもどうり、にこにこされてていましたので、ホッとしました。

軽い黄疸はありますが、もうほとんどよくなっていました。症状が改善した患者さんを見るのはうれしいことです。ちいさなチューブ1本ですが、入って機能してしまえばこんなに元気になるのです。

癌は残したままですが、このまま、元気に退院してほしいものです。

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