第5回

めまい、吐き気、頭痛で来院した50歳の女性

00.4.29

4月29日診療日記

今日は50歳の女性Fさんについて書きます。割れるような頭痛、眩暈、ふらつきで4月18日来院されました。もともと不眠がある方で、今回の症状は不眠が続いたためと思いました。(ドクターYもインターネットのしすぎでよく似た症状が出るんです)

ところが、MRIを撮影してみると何と下垂体に腫瘍があるではありませんか。下垂体というのは脳の下にあり、全身のホルモンを管理している司令塔の様な臓器です。時々、腫瘍が見つかることがあります。全く無機能の腫瘍やホルモンを異常分泌している腫瘍まであります。

プロラクチンというホルモンを異常分泌しているタイプの腫瘍は、内服のお薬で腫瘍が小さくなる可能性がありますが、それ以外の腫瘍は治すには手術しかありません。

しかし、女性でプロラクチンというホルモンの分泌異常があれば、お乳がはったり、乳汁分泌を認めたりしますので、通常はもっと早く異常にきずくはずです。この患者さんはほとんどホルモン異常を疑う様な症状はなかったので、おそらく無機能タイプの下垂体腫瘍であろうと思われました。

この患者さんの腫瘍は大きく、視交差(両方の視神経が交差するところ)を強く圧排しています。ホルモン異常があってもなくても、しだいに視野狭窄(目の見える範囲が狭くなる)の症状が出てくる可能性が大きいと思われました。このため、いずれは、手術が必要なのです。

K病院で手術の予定をたてました。うまく手術が出来ればいいなと思います。

この患者さんは不眠症がもともとあり、このため症状が出ていたようです。(入院後睡眠薬でしっかり眠っていただいたら症状がとれました)
腫瘍による直接の症状ではなかったようです。

結局この腫瘍が見つかったのは、別件逮捕ということになります。だまされましたが、結果としては、視野狭窄の症状が出る前に発見できて良かったと思います。多くの診療の中では、こういう偶然、ラッキーは結構経験します。

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