診療日記52
66歳の男性Tさんは、H.10年10月から割れるような頭痛がおこりました。
2週間で改善しましたが、その後も全身に力が入らない、性欲低下などを自覚しました。
H.11年1月頃、再度頭痛持続したため私の外来受診されました。頭部 MRI 上、下垂体付近に腫瘤を確認しました。MRI にて経過観察としましたが12月、低
Na 血症が原因で昼食前に突然意識消失発作出現1〜2時間で回復しました。
H.12年3月、目がかすむようになり、再度MRI施行され、腫瘤の増大を認めました。
5月になり急に視力障害がすすみ、視野狭窄を確認しましたので手術目的にて大学病院脳神経外科紹介入院となりました。術前MRIではラトケ嚢胞という下垂体の近くにできる嚢胞が疑われました。この嚢胞は直径3ミリを越すことは少なく、症状を出すことはまれであります。しかし大きな場合、周囲構造物にたいする圧迫症状、すなわち視野欠損、尿崩症などがおこります。この患者さんは7月に無事手術が終り、視野の異常も改善しました。この病気はほとんどは放置しても問題がない事が多いのですが、この方の様に圧迫症状のため手術が必要なことがまれにあります。