第71回

胃ガンの術後に腸閉塞を起こした51歳男性

00.9.23

胃ガンの術後に腸閉塞を起こした51歳男性

胃ガンの手術をうけた既往のある男性です。朝起きると腹痛、吐き気があり病院に入院しました。
以前、手術後に腸閉塞の既往があり、今回は腹部レントゲンで明らかな腸閉塞の所見を認めませんでした。
しかし、症状は腸閉塞の初期症状の様でしたので入院勧めましたが、
何とか症状が軽くなったので帰宅を希望して帰られました。
ところが、その日の午後になって腹痛が激しくなり再度受診されました。
今度はレントゲン上、腸閉塞と思われる小腸の二ボ−像(鏡面像)を認めました。
胃ガン手術後の癒着による腸閉塞と思われました。
腸閉塞には、高気圧酸素治療器が有効ですのでまずこの治療をを開始したのですが、
残念ながら解除出来ずイレウス管を挿入しました。
これは、鼻から食道、胃、小腸の閉塞部位まで管を挿入して閉塞部位の腸液やガスを抜き、
閉塞を解除する治療です。
かなり長い管をを挿入しますので患者さんは結構苦しい治療です。
この患者さんも下の写真の様にイレウス管を挿入し2日で腸閉塞を解除出来ました。


腸閉塞(イレウス)とは、

「腸管内容の通過が障害された状態で、疼痛、悪心、嘔吐、排便・排ガスの停止、鼓腸などの症状がある。」

種類

1)機械的イレウス(intestinal obstruction):
  <1>閉塞性(単純性)
    1.異物・糞塊・癒着などが原因。
    2.腹痛は初め著明でない。
  <2>絞扼性(複雑性)
    1.腸軸捻・腸重積・篏頓などが原因。
    2.腸間膜の血行停止を伴う。
    3.突然激烈な腹痛で始まる。
     初期より反射性の嘔吐。
    4.血行障害により壊死を起こす可能性があるので、開腹手術など緊急の治療を要する。
 
(2)機能的(麻痺性)
    1.腹膜炎・開腹手術が原因。
    2.鼓腸・排便・ガス排出停止、
     腸の蠕動運動も停止。
    3.嘔吐。

腹部レントゲン写真で鏡面像を伴った異常ガス像を認めます。

小腸の通過障害があるためにおこる異常です。


閉塞部位までかなり長い管(イレウス管)を挿入します。

この管から流れずにたまっている腸液を抜きます。

骨盤内の小腸まで挿入されているのがわかると思います。

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