第88回

飲酒後に左手がしびれモヤモヤ病と診断された44歳男性

00.11.7

44歳男性のWさんは、飲酒後に左上肢がしびれたり、
一過性に両則の上肢の脱力発作が起こるようになりました。
一過性の脳虚血発作を考えMRIを撮りました。
MRAというMRIを使った脳血管撮影で
両則の中大脳動脈という大きな脳血管が
ほとんど認められないことが分かりました。
3D-CT(3次元CT)にて検査をしましたが
やはり両則の中大脳動脈は認めませんでした。
血管造影の検査を施行しましたところ、
この方の病気は「モヤモヤ病」という診断でした。
この「モヤモヤ病」という病気は、
両則の内頚動脈末梢部から中大脳動脈、
前大脳動脈の起始部にかけての高度狭窄または閉塞
と、
「モヤモヤ血管」と呼ばれる側副血行路(バイパス路のこと)
の発達を認める疾患です。
日本で初めて発見された本態不明の閉塞性血管病変です。
この方には、STA-MCA anastomosisという頭蓋の外の血管(浅側頭動脈)と
頭蓋内の血管(中大脳動脈皮質枝)をつないでバイパスを作る手術を左右両方に
2回に分けて施行してもらいました。
一応血流の改善効果はあっているようですが、
今後長い間このバイパスが機能するか経過を見なければ分かりません。
この病気は長い経過の中では閉塞して脳梗塞になったり、
脳出血になったりする可能性が高いようです。
この方は44歳でしたが、小児にもよくみられます。

3D-CTです。

両側の中大脳動脈は画像に描出されません。

ほぼ主幹部で閉塞しています。


血管造影の写真です。

中大脳動脈は認めませんが、もやもやした血管が認められます。

自然に作られたバイパス路になっています。

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