すのものの「純正律について」(その1)

すのものの「純正律について」』に、 非常に簡単な要約があります。

はじめに --- 純正律とは

純正律とは、完全五度、長三度、短三度を「純正」に選ぶことで得られる音律である。 このページでは、純正律について、このページだけを読んで理解できるように説明する。 この説明は、歴史的な流れに沿ってはいない。理論的に組み立てたものである。

この純正律では、異名同音を別の音と見るうえに、 同じ名前の音でも無限個の異なる高さのものがあると考える。 いわば、“同名異音”である。 そのため、通常の鍵盤楽器を、 すべての長三和音・短三和音が純正になるように調律することは不可能である。

それらの音は、次の図のように並べて表すことができる。 これは、無限に広がる図の一部分である。 異なるマスに書かれた音は、同じ音名をもっていても音程が異なる。
##################################################
AEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisis 
 CGDAEHFisCisGisDisAisEis
AsEsBFCGDAEHFisCis 
 CesGesDesAsEsBFCGDAE
AsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFC 
「品」型をなす三つの音は純正の長三和音、 それを上下逆にしたかたちをなす三つの音は純正の短三和音である。 この図を利用すれば、 純正律についての議論が視覚的にわかりやすくなる。

平均律を仮定して書かれた既存の楽曲をこの純正律で演奏しようとすると、 最初と最後の主和音の音の高さが違う、などの現象が起きる。 そのような現象を避けて、新規に楽曲を書こうとすると、和声進行に制限がつく。

任意の長調で、I, III, IV, V, VI の和音だけを使って書かれた曲なら、 通常の鍵盤楽器をこの純正律に調律して演奏することが可能である。 II を含むと、問題が発生する。

※ 以下で、「等分平均律」とあるのは、1 オクターブを 12 等分してできる音律を指す。 「平均律」に、必ずしも“等分”の意味はないそうなので、 必要な場合にはこのように断ることにする。

※ 「律」とは、どの高さの音を選び出すか、であり、 「調」は選び出された音のうちのどれを主音に選ぶか、である。 よって、「純正調」ということばは適切でない。 また、「ハ長調」といっても、音律によって、並べられた音は異なる。 ついでながら、「ハ長調」「イ短調」などというのは 「ハ調の長旋法」「イ調の短旋法」と呼ぶのが適当なようで、 「長調」「短調」は「〜長調」「〜短調」 という呼び名からできた通称と考えるべきである。 以下に述べる純正律では、長調・短調はもちろん、 それ以外の旋法であっても、完全五度・長三度・短三度を元にしている限り、 実現可能である。

※※ この印で始まる、この色で書かれた段落は、 理論的な構成には関係ないので、飛ばして読むことができる。

完全五度をなす音の系列

まず、完全五度をなす音の系列を考える。 C から始めて、その右には C からみて完全五度上の音、すなわち G をおく。 その右には、さらに完全五度上の音、D を書く。 C の左には、C からみて完全五度下の音、F を書く。 その左には、さらに完全五度下の音、B を書く。 このようにして、この系列を左右に無限にのばしてゆく。
###########################################################################
DesAsEsBFCGDAEHFisCis
地の色は、平均律で同じ音となるものは同じ色になるようつけてある。

これらは、 その音を主音とする長調の調号におけるシャープの数と対応させるとわかりやすい。 フラットが3個の場合は -3 と数える。
###########################################################################
DesAsEsBFCGDAEHFisCis
-5-4-3-2-10+1+2+3+4+5+6+7

F から H までが、基本となる一群である。 その右には、それらの音名に -is をつけたものを音名にもつ音が並ぶ。 さらにその右には、それらにさらに -is をつけたものが並ぶ。 F から H までの左には、-es をつけたものが並ぶが、Hes は普通 B と呼ぶ。 その左には、それらに -es をつけたものが並ぶ。 Feses の左どなりに、Beses を置く。 名のある音すべてを完全五度ずつあがるように並べれば、次のようになる。
####################################################################################################################################################################################
BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis
-16-15-14-13-12-11-10-9-8-7-6-5-4-3-2-10+1+2+3+4+5+6+7+8+9+10+11+12+13+14+15+16+17+18+19
重減
七度
重減
四度
重減
一度
重減
五度

二度

六度

三度

七度

四度

一度

五度

二度

六度

三度

七度
完全
四度
完全
一度
完全
五度

二度

六度

三度

七度

四度

一度

五度

二度

六度

三度

七度
重増
四度
重増
一度
重増
五度
重増
二度
重増
六度
重増
三度
重増
七度
シャープやフラットが 8 以上つく調号は使われないが、 「-is がつくと 7 増える」「-es がつくと 7 減る」と覚えておき、 異名同音を区別して論ずる際の音程はこの数の差で決まる、 ということは知っておくと便利である。 C から見た音程を、下の行に書き添えて置いた。 音程は、「重減」(七つ)、「減」(七つ)、「短」(四つ)、「完全」(三つ)、 「長」(四つ)、「増」(七つ)、「重増」(七つ)が規則的に並ぶ。 (純正律における実際の周波数比についてはあとで述べる。)

折りたたんで示せば、次のようになる。
###################################
 Beses
FesesCesesGesesDesesAsesEsesBes
FesCesGesDesAsEsB
FCGDAEH
FisCisGisDisAisEisHis
FisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis
Beses という呼び方は実在するのかどうか不明だが、これを加えると 36 音となり、 平均律でいう一つの音に三つずつの音名がつくので、こうしておく。 下の図を参照。
############################################################
BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDes
AsEsBFCGDAEHFisCis
GisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis

ここまでは純正律とは無関係なことがらである。

(「完全五度」「長三度」 などの周波数比が実際にいくつになるかは音律によって変わるが、 音程の名前は音律とは独立に上のように決まっている、と考えるべきである。)

(上の表から、完全五度×4はオクターブの差を除いて長三度に等しい、 などとわかるが、次に述べる純正律ではそれは成立しない。 しかし、 ある音からみて完全五度×4だけ上の音と、長三度だけ上の音とは同じ音名をもつ。 同じ音名をもつが、異なる音程の音である。)

付) 地の色は、次のようにつけてある。 右の図に書いたのは色番号である。
############## ############ ############
  Deses
C
His
 
  Ces
H
Aisis
Des
Cis
Hisis
 
  Ceses
B
Ais
Eses
D
Cisis
 
   
   
  Bes
A
Gisis
Feses
Es
Dis
 
   
   
  Beses
As
Gis
Fes
E
Disis
 
  Ases
G
Fisis
Geses
F
Eis
 
  Ges
Fis
Eisis
 
   
   
############## ############ ############
############## ############ ############
  #ddffff  
  #ddffee #ddeeff  
  #ddffdd #ddddff  
   
   
  #eeffdd #eeddff  
   
   
  #ffffdd #ffddff  
  #ffeedd #ffddee  
  #ffdddd  
   
   
############## ############ ############

純正律の構成法

純正律では、ある音とその完全五度上の音との周波数比は 2:3 とする。 C の周波数を 1 として、C の近くの音の周波数を示す。 なお、周波数を 2 倍すると 1 オクターブあがり、 1/2 倍すると 1 オクターブさがる。 オクターブあげさげしても同じ音と考えるので、 ここでは、周波数は 1 以上 2 未満にとることにする。 以下、「周波数」「周波数比」なる語は省略することがある。
########################################################
Des
256/243
As
128/81
Es
32/27
B
16/9
F
4/3
C
1
G
3/2
D
9/8
A
27/16
E
81/64
H
243/128
Fis
729/512
Cis
2187/2048

左端の Des と右端の Cis は平均律では同じ音だが、 ここでは、Des からみて Cis は 531441/524288 倍にあたる。 完全五度をなす系列は左右に無限にのびるが、 これらはすべて異なる音である。 それは、3 を何度かけても、 2 のベキ(2 を何回かかけあわせたもの)にはならないからである。 (こうやってできる無限個の音の列が、ピタゴラス音律である。)

※※ 周波数比 r の音程を、 1200*log10(r)/log10(2) セントと表すことがある。 1 オクターブは 1200 セント、等分平均律の半音が 100 セントである。 三つの音 X, Y, Z があって、X と Y との周波数比、 Y と Z との周波数比がわかっている場合、 X と Z の周波数比を求めるには掛け算を行なう必要があるが、 セントで表された値の場合は足し算で済む、という利点がある。 純正律の完全五度 3/2 は 701.955000... セントで、 等分平均律の 700 セントよりわずかに大きい。 また、 上で述べた Des と Cis との違い 531441/524288 = 312/219 は 23.460010... セントに当たる。 歴史的にはこれをピタゴラス・コンマと呼ぶらしい。

C と G の間に E を入れると長三和音ができる。 純正律では、その際、E を上の表にある 81/64 にはとらない。 C, E, G の周波数比が 4:5:6 となるようにとる。 すなわち、E は 5/4 である。 分母を 64 にすると 80/64 であるから、 上の表にある E の 80/81 倍となる。 その E を、C と G の上に置こう。
########################################################
 E
5/4
 
Des
256/243
As
128/81
Es
32/27
B
16/9
F
4/3
C
1
G
3/2
D
9/8
A
27/16
E
81/64
H
243/128
Fis
729/512
Cis
2187/2048
C とこの E との間の音程を長三度と呼ぶ。周波数比は 4:5 である。 この E と G との間の音程を短三度と呼ぶ。周波数比は 5:6 である。 (下の行の C と E の間の音程は長三度と呼ばないし、 下の行の E と G の間の音程は短三度と呼ばない。)

※※ 純正律の長三度 5/4 は 386.313713... セントで、 等分平均律の 400 セントよりも小さい。 純正律の短三度 6/5 は 315.641287... セントで、 等分平均律の 300 セントよりも大きい。 また、上に登場した二つの E の周波数比 81/80 = 34/(24×5) は 21.506289... セントにあたる。 歴史的にはこれをシントニック・コンマと呼ぶらしい。

G と D の間に H を入れて長三和音を作るには、 H を、G = 3/2 の 5/4 倍、すなわち (3/2)*(5/4) = 15/8 にすればよい。 これは、上の行の E の 5/4 を 3/2 倍したものにも等しい。 すなわち、上の行の E の完全五度上の音である。 同様にして、下の行のすべての音の上の長三和音ができるよう上の行を埋めてゆくと、 上の行には、完全五度をなす系列が並ぶ。 その数値は下の行の同名の音の 80/81 となる。
########################################################
F
320/243
C
160/81
G
40/27
D
10/9
A
5/3
E
5/4
H
15/8
Fis
45/32
Cis
135/128
Gis
405/256
Dis
1215/1028
Ais
3645/2048
Des
256/243
As
128/81
Es
32/27
B
16/9
F
4/3
C
1
G
3/2
D
9/8
A
27/16
E
81/64
H
243/128
Fis
729/512
Cis
2187/2048
ここで、上の行も下の行も一つ右に進めば完全五度あがり、 右上に一マス進むと長三度あがり、右下に一マス進むと短三度あがることに注意しよう。

今度は、下の行 C を第三音とする長三和音、すなわち As, C, Es からなる和音を考えてみよう。 その As は、C = 1 と長三度をなすから、上の行の E = 5/4 の逆数、4/5 を 1 オクターブ上げた 8/5 となる。Es はその 3/2 倍、すなわち 12/5 を 1 オクターブ下げた 6/5 となる。 下の行のほかの音を第三音とする長三和音を作るには、この As と Es から、 左右に完全五度ずつとってゆけばよい。それを下の行のさらに下に追加すれば、次のようになる。
########################################################
F
320/243
C
160/81
G
40/27
D
10/9
A
5/3
E
5/4
H
15/8
Fis
45/32
Cis
135/128
Gis
405/256
Dis
1215/1028
Ais
3645/2048
Des
256/243
As
128/81
Es
32/27
B
16/9
F
4/3
C
1
G
3/2
D
9/8
A
27/16
E
81/64
H
243/128
Fis
729/512
Cis
2187/2048
Fes
512/405
Ces
256/135
Ges
64/45
Des
16/15
As
8/5
Es
6/5
B
9/5
F
27/20
C
81/80
G
243/160
D
729/640
A
2187/1280
真上に二行あがると、半音あがることに注意しよう。 これは、長三度と短三度の差、すなわち増一度にあたる。 その周波数比は 25/24 である。

※※ この増一度 25/24 は 70.672426... セントにあたる。 等分平均律の 100 セントよりも小さい。

この図からさらに、最上行の C の上の長三和音を考えることができる。 また、最下行の C を第三音とする長三和音を考えることができる。 すると、この系列は上下に無限にのびるが、それらのうちに同じ高さの音は現れない。 3 と 5 を何回かけても、2 のベキにはならないからである。

音の高さは略して、広い範囲を表にしたのが次である。 Beses から Hisis までの 36 の音すべてが並んだ行を含んでいる。
####################################################################################################################################################
 Hisis 
GisisDisisAisisEisisHisis 
 HisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
GisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
 HFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
GDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
 BFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
GesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
 BesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
GesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisis
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDisAisEisHis 
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEHFisCisGisDis
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGDAEH 
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFCGD
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEsB 
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDes
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBes 
 BesesFesesCesesGesesDeses
 Beses 
この表は、右に一マス進むと完全五度あがり、右上に一マス進むと長三度あがり、 右下に一マス進むと短三度あがるようにできている。 周波数は、右に一マス進むと 3/2 倍になり、右上に一マス進むと 5/4 倍になり、 右下に一マス進むと 6/5 倍になる。 (ただし、「1 以上 2 未満」という範囲からはずれたら、 2 を掛けるか 2 で割るかしてその範囲におさめるものとする。)

(『すのものの「純正律について」(その2)』 には、上の範囲の表で、 コンピュータに計算させた周波数比とそれをセントで表した値を添えたものを載せた。)

これら無限個の音すべてを集めたものが、純正律である。 「品」の形に並ぶ三つの音は、左下にある音を根音とする長三和音をなす。 その上下を逆にした形の三つの音は、左上にある音を根音とする短三和音である。

短三和音をなす三つの音の周波数比は 10:12:15 である。 この比はこれ以上簡単な整数では表せない。 しかし、このうちの任意の二つの音の周波数比は、 5:6, 4:5, 2:3 と小さな整数の比で表される。 このことが、短三和音を心地よいと感じる原因かもしれない。

上の図は大きすぎて見にくいときがある。範囲を制限したものも用意しておこう。
##################################################
AisisEisisHisis 
 CisisGisisDisisAisisEisisHisis 
AisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisisHisis 
 CisGisDisAisEisHisFisisCisisGisisDisisAisisEisis
AEHFisCisGisDisAisEisHisFisisCisis 
 CGDAEHFisCisGisDisAisEis
AsEsBFCGDAEHFisCis 
 CesGesDesAsEsBFCGDAE
AsesEsesBesFesCesGesDesAsEsBFC 
 CesesGesesDesesAsesEsesBesFesCesGesDesAsEs
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEsesBesFesCes 
 BesesFesesCesesGesesDesesAsesEses
 BesesFesesCeses 

純正律で確実に決まっている音程は次の八つのみ、と考えるのがよいようである。
####################
 
H
 
FisCisGisDis
 DA
5/3
長六
E
5/4
長三
H 
BF
4/3
完四
C
1
完一
G
3/2
完五
D
 DesAs
8/5
短六
Es
6/5
短三
B
 
Bes
 
FesCesGesDes 

長三和音に根音からみて短七度の音を加えた四和音も使う場合

長三和音に、根音から見て短七度上の音を加えて、 たとえば C, E, G, B からなる四和音を使う場合、 初めの三つの音は 4:5:6 なので、全体が 4:5:6:7 になるように B を決める、 という方法も考えられる。 そのときの B は、前にあげた最も広い範囲の表にも載っていない音である。 それは、3 と 5 を何回かけても 2 のベキに 7 をかけた数にはならないからである。

具体的には 7/4 となり、上で最初に作った行にあった B = 16/9 の 63/64 にあたる。 その上の行の B は 1280/729 となるが、それよりもわずかに低い。 その比は (7/4)/(1280/729) = 5103/5120 である。

※※ 64/63 は 27.264091... セントに、 5120/5103 は 5.757802... セントにあたる。

最初に作った行の B でもその上の行の B でもなく、根音 C から見て短七度上の B, すなわち、一つ下の行の B と周波数を比較すると、(7/4)/(9/5) = 35/36 となる。

※※ 36/35 は 48.770381... セントとなり、これはかなり大きい。

この B の上の長三和音などを使う音楽の場合、上の表だけではすまなくなり、 立体的な“表”が必要となる。 C, E, G の三つのマスの合わさった点の真上にこの B を置き、 そこから出発して完全五度、 長三度で音を並べていったものが最初の表の一つ手前、すなわち、一段上に重なる。 それが手前と奥にそれぞれ無限にのびていった、立体的なものになるだろう。

次の四つの図のうち、左上のものは、いままで書いてきたものの中央の一部分である。 左下と右上は全く同一の図で、これが、左上の図の一段上に重なる。 同じ図なので、たとえば左下の図の B のマスから上へ、 および、 右上の図の B のマスからと左へ、とたどっていって、 左上の図でぶつかるところが、B が乗る場所である。 右下の図は、それらのさらに上の段に重なるものである。
###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;
  G
40/27
D
10/9
A
5/3
E
5/4
H
15/8
Fis
45/32
 
 
 Es
32/27
B
16/9
F
4/3
C
1
G
3/2
D
9/8
A
27/16
 
  Ges
64/45
Des
16/15
As
8/5
Es
6/5
B
9/5
F
27/20
 
 
###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;
  
  Des
28/27
As
14/9
Es
7/6
B
7/4
F
21/16
C
63/32
 
 
 Bes
224/135
Fes
56/45
Ces
28/15
Ges
7/5
Des
21/20
As
63/40
Es
189/160
 
  
###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;
  
  Des
28/27
As
14/9
Es
7/6
B
7/4
F
21/16
C
63/32
 
 
 Bes
224/135
Fes
56/45
Ces
28/15
Ges
7/5
Des
21/20
As
63/40
Es
189/160
 
  
###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;###;
 Fes
98/81
Ces
49/27
Ges
49/36
Des
49/48
As
49/32
Es
147/128
B
441/256
 
  Ases
196/135
Eses
49/45
Bes
49/30
Fes
49/40
Ces
147/80
Ges
441/320
 
 
 Feses
784/675
Ceses
392/225
Geses
98/75
Deses
49/25
Ases
147/100
Eses
441/400
Bes
1323/800
 
この図からわかるように、ある段の上に、二つの段を重ねても、 マスのパターンは元に戻らない。 戻るのは、四つめの段で、である。 そこで最初にとった C の真上にくるのは、 Beses の完全五度下の音である。名前はない。

上の図は、ブラウザによっては大きすぎて意図した通りに表示されないので、 数値を除いた、より小さい表も載せておく。
##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;
  GDAEHFis 
 
 EsBFCGDA
 
  GesDesAsEsBF 
 
##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;
  
  DesAsEsBFC 
 
 BesFesCesGesDesAsEs
 
  
##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;
  
  DesAsEsBFC 
 
 BesFesCesGesDesAsEs
 
  
##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;##;
 FesCesGesDesAsEsB
 
  AsesEsesBesFesCesGes 
 
 FesesCesesGesesDesesAsesEsesBes
 

付) その第七音 B の上にさらに第九音 D をのせる場合、 C:E:G:B:D は 4:5:6:7:9 だろう。 8 では C に、10 では E になってしまうから。 G:D は 6:9 = 2:3 であるから、完全五度である。

B を除いた C, E, G, D は次のように並ぶ。
############
 EH 
CGD

以上で、純正律の定義の説明は終わりである。

あとがき

このページの表は、すべて html の table であり、私が手作業で書いたものである。 周波数比、セントで表した値の計算には Windows の電卓を利用したが、 手計算である。


すのもの Sunomono