分かりにくいせりふの方言などの訳
小さいときに「風の又三郎」を読んだけれど方言が難しくて歯が立たなかったという声をよく聞きます。低学年の方はこのページを参考にして下さい。
九月一日
「ほう、おら一等だぞ。一等だぞ。」「わーい、僕一番だぞ。一番だぞ。」
「ちょうはあかぐり ちょうはあかぐり。」意味のない言葉
「なして泣いでら、うなかもたのが。」「どうして泣いてるの? お前がちょっかい出したのか?」
「何した。」「どうした?」
「誰だ、時間にならなぃに教室へはいってるのは。」「誰だ、時間にならないのに・・・」
「お天気のいゝ時教室さ入ってるづど先生にうんと叱らえるぞ。」「お天気のいい時に教室に入ってると先生にうんと叱られるぞ。」
「叱らえでもおら知らなぃよ。」「叱られても俺知らないよ。」
「早ぐ出はって来(コ) 出はって来。」「早く出て来いよ、出て来いよ。」
「学校さ入るのだな。」「学校へ入るのだな。」
「あゝ 三年生さ入るのだ。」「ああ、三年生に入るのだ。」
「わあ、痛ぃじゃあ。」「おい、痛いよ。」
「わあ、われ悪くてでひと撲(ハダ)ぃだなあ。」「おい、自分が悪いのに人を叩いたなあ。」
「わあい、喧嘩するなったら、先生ぁちゃんと職員室に来てらぞ。」「おおい、喧嘩するなよ、先生はちゃんと職員室に来てるんだぞ。」
「わあうなだ喧嘩したんだがら又三郎居なぐなったな。」「おい、お前ら喧嘩したから又三郎がいなくなったんだぞ。」
「靴はいでだたぞ。」「靴はいてたぞ。」
「服も着でだたぞ。」「洋服も着てたんだぞ。」
「髪赤くておがしやづだったな。」「髪の毛赤くて変なやつだったな。」
「ありやありや、又三郎おれの机の上さ石かげ乗せでったぞ。」「あれれ、又三郎俺の机の上に石ころ乗せてったぞ。」
「そうだ。ありや。あそごのガラスもぶっかしたぞ。」「そうだ。あれ、あそこのガラスも割ってったぞ。」
「そだなぃでぁ。あいづぁ休み前に嘉一石ぶっつけだのだな。」「そうじゃないよ。あいつは休みの前に嘉一が石をぶっつけたやつだよ。」
「わあい。そだなぃでぁ。」「おおい、そうじゃないんだよ。」
「一年から順に前へおい。」「・・・前へ進め。」
「わあ、おらの机代ってるぞ。」「おい、俺の机代わってるぞ。」
「わあ、おらの机さ石かけ入ってるぞ。」「おい、俺の机に石ころ入ってるぞ。」
「キッコ、キッコ、うな通信簿持って来たが。おら忘れて来たじゃあ。」「・・・お前通知表持ってきたか?俺忘れてきたよ。」
「わあい、さの、木ぺん借せ、木ぺん借せったら。」「おい、さの、鉛筆かせ、鉛筆貸せよう。」
「わぁがない。ひとの雑記帳とってって。」「だめだよ。人の鉛筆取ってっちゃ。」
「叱(シ)っ、悦治、やがましったら。嘉助ぇ、喜っこぅ。わあい。」「・・・やかましいぞ。・・・おい!」
「むかしから秋は一番からだこゝろもひきしまって勉強のできる時だといってあるのです。「・・・と言われているのです。」
「高田さん名は何て云うべな。」「名前は何ていうのかな。」
「わあ、うまい、そりや、やっぱり又三郎だな。」「おい、いいぞ、・・・」
「先生、あの人は高田さんのお父さんすか。」「・・・お父さんですか。」
「何の用で来たべ。」「何の用で来たんだろう。」
「上の野原の入口にモリブデンという鉱石ができるので、それをだんだん掘るようにする為だそうです。」「・・・鉱石が取れるので、それを掘る準備をするためだそうです。」
「どごらあだりだべな。」「どの辺だろうな。」
「モリブデン何にするべな。」「・・・何にするんですか。」
「そだら又三郎も掘るべが。」「それなら又三郎も掘るのかな。」
「又三郎だなぃ 高田三郎だじゃ。」「又三郎じゃない、高田三郎なんだよ。」
「嘉助、うなも残ってらば掃除してすけろ。」「・・・お前も残ってるのなら掃除手伝ってくれよ。」
「わぁい。やんたじゃ。今日五年生ど六年生だな。」「おい、やだよ。今日は五年生と六年生なんだよな。」
九月二日
「そうだ。やっぱりあいづ又三郎だぞ。」「・・・やっぱりあいつ・・・」
「うわあ兄(アイ)な木ぺん取ってわかんないな。」「やだあ、兄ちゃん、鉛筆取ったらだめだよ。」
「わあこいつおれのだなあ。」「おい、こいつは僕のなんだよ。」
「兄な 兄なの木ぺんは一昨日小屋で無くしてしまったけなあ。よこせったら。」「兄ちゃん、兄ちゃんの鉛筆はおととい小屋で無くしてしまったんだからね。返してよう。」
「では三年生のひとはお休みの前にならった引き算をもう一ぺん習ってみましょう。これを勘定してごらんなさい。」「・・・もう一回復習してみましょう。これを計算してみてください。」
「四年生の人はこれを置いて。」「・・・この式を書いて。」
「五年生の人は読本の 頁の 課をひらいて声をたてないで読めるだけ読んでごらんなさい。わからない字は雑記帖へ拾って置くのです。」「五年生の人は国語の本の・・・わからない字は雑記 帳へ書き抜いておくのです。」
「孝一さんは読本の 頁をしらべてやはり知らない字を書き抜いてください。」「孝一さんは国語の本の・・・」
九月四日
「又三郎ほんとにあそごの湧水まで来て待ぢでるべが。」「・・・あそこの湧水まで来て待ってるだろうか。」
「待ぢでるんだ。又三郎偽(ウソ)こがなぃもな。」「待っているよ。又三郎はうそつかないからな。」
「あゝ暑う、風吹げばいゝな。」「ああ暑い、風吹けばいいのにな。」
「どごがらだが風吹いでるぞ。」「どこからか風吹いてるぞ。」
「又三郎吹がせだらべも。」「又三郎が吹かせてるんじゃないの?」
「何だがお日さんぼゃっとして来たな。」「なんだかお日様ぼやっとしてきたな。」
「そだら早ぐ行ぐべすさ。おらまんつ水呑んでぐ。」「じゃあ早く行こうな。俺はその前に水飲んでいくよ。」
「うん。まんつ野原さ行ぐべすさ。」「うん。その前に野原へ行こうよな。」
「ありゃ、あいづ川だぞ。」「おや、あいつ川だぞ。」
「何のようだど。」「何のようだって?」
「うな神さんの帯見だごとあるが。」「お前、神様の帯見たことあるのか?」
「もう少し行ぐづどみんなして草刈ってるぞ。それがら馬の居るどごもあるぞ。」「もう少し行くとみんなで草を刈ってるぞ。それから馬のいるところもあるぞ。」
「兄な。居るが。兄な。来たぞ。」「兄ちゃん、いる?。兄ちゃん、来たよ。」
「おゝい。あゝい。其処に居ろ。今行ぐぞ。」「おおい、はあい、そこにいろ。今行くぞ。」
「善(ユ)ぐ来たな。みんなも連れで来たのが。善ぐ来た。戻りに馬こ連れでてけろな。今日ぁ、午(ヒル)まがらきっと曇る。俺(オラ)もう少し草集めて仕舞(シム)がらな、うなだ遊ばばあの土手の中さ入ってろ。まだ牧場の馬二十疋ばがり居るがらな。」「よく来たな。みんなもつれて来たのか。よく来た。帰りに馬を連れてってくれよな。きょうは午後はきっと曇ってくるぞ。俺はもう少し草を集めてしまうからな。お前たち遊ぶのならあの土手の中へ入ってろ。まだ牧場の馬二十頭ばかりいるからな。」
「土手がら外さ出はるなよ。迷ってしまうづど危なぃがらな。午まになったら又来るがら。」「土手から外へ出るなよ。迷ってしまうと危ないからな。お昼になったらまた来るから。」
「うん。土手の中に居るがら。」「うん。土手の中にいるから。」
「おらこったなもの外せだだど。」「俺こんなもの外せるんだぞ。」
「この馬みんな千円以上するづもな。来年がらみんな競馬さも出はるのだづじゃい。」「この馬みんな千円以上するんだって。来年からみんな競馬にも出るんだよ。」
「ははあ、塩をけろづのだな。」「ははあ、塩をくれというんだな。」
「わあ又三郎馬怖(オッカ)ながるじゃい。」「おい、又三郎馬を恐がってるよ。」
「わあい、又三郎馬怖ながるじゃい。」「おい、又三郎馬恐がってるよ。」
「そいづ面白な。」「そいつはおもしろいな。」
「叱らえるぞ。牧夫に見っ附らえでがら。」「叱られるぞ。牧夫に見つけられたら。」
「よし、おらこの馬だぞ。」「よし、俺この馬だぞ。」
「あ、馬出はる、馬出はる。押えろ、押えろ。」「あ、馬出て行く、馬出ていく、捕まえろ、捕まえろ。」
「早ぐ来て押えろ。早ぐ来て。」「早く来て捕まえろ。早く来て。」
「そろそろど押えろよ。そろそろど。」「ゆっくりと捕まえろよ。ゆっくりと。」
「兄な、馬ぁ逃げる、馬ぁ逃げる。兄な。馬逃げる。」「兄ちゃん、馬が逃げる、・・・」
(あゝ、こいつは悪くなって来た。みんな悪いことはこれから集(タカ)ってやって来るのだ。)(ああ、こいつは困ったことになってきた。困ったことはみんなこれからまとまってやってくるのだ。)
(あゝ、悪くなった、悪くなった。)(ああ、困った、困った。)
「一郎、一郎、こっちさ来う。」「・・・こっちへ来いよう。」
(間違って原を向う側へ下りれば、又三郎もおれも、もう死ぬばかりだ。)(・・・もう死ぬに決まっている。)
「一郎、一郎、居るが。一郎。」「・・・いるか?・・・」
「伊佐戸の町の、電気工夫の童(ワラス)ぁ、山男に手足ぃ縄(シバ)らえてたふうだ」「・・・電気工事人の子供は・・・手足を縛られていたそうだ」
「探したぞ。危ながったぞ。すっかりぬれだな。どう。」「・・・危なかったぞ。すっかり濡れたな。・・・」
「さあ、あべさ。」「さあ、行こうぜ。」
「又三郎びっくりしたべぁ。」「・・・びっくりしたろう。」
「おじいさん。居だ、居だ。みんな居だ。」「・・・いた、いた、みんないた。」
「あゝ心配した、心配した。あゝ好(エ)がった。おゝ嘉助。寒がべぁ、さあ入れ。」「・・・ああ良かった。おお嘉助。寒いだろう、・・・」
「おゝむぞやな。な、何ぼが泣いだがな。そのわろは金山堀りのわろだな。さあさあみんな、団子たべろ。食べろ。な。今こっちを焼ぐがらな。全体何処迄行ってだった。」「おおかわいそうに。な、ずいぶん泣いただろう。その子供は鉱山師の子供だな。・・・いまこっちを焼くからな。いったいどこまで行っていたんだ。」
「危ぃがった。危ぃがった。向うさ降りだら馬も人もそれっ切りだったぞ。さあ嘉助、団子喰べろ。このわろもたべろ。さあさあ、こいづも食べろ。」「危なかった。危なかった。向うへ降りたら・・・この子も食べろ。さあさあ、こいつも食べろ。」
「おじいさん。馬置いでくるが。」「おじいさん、馬を置いてこようか。」
「うんうん。牧夫来るどまだやがましがらな。したども、も少し待で。又すぐ晴れる。あゝ心配した。俺も虎こ山の下まで行って見で来た。はあ、まんつ好がった。雨も晴れる。」「・・・牧夫が来るとまたうるさいからな。だけどもう少し待て。・・・行って見てきた。ああ、なにしろ良かった。・・・」
「今朝ほんとに天気好がったのにな。」「・・・良かったのにな。」
「うん。又好(ユ)ぐなるさ。あ、雨漏って来たな。」「・・・良くなるさ。・・・」
「おじいさん。明るぐなった。雨ぁ霽(ハ)れだ。」「・・・明るくなった。雨は上がった。」
「うんうん、そうが。さあみんなよっく火にあだれ、おら又草刈るがらな。」「・・・そうか。さあみんな良うく火に当たれ。おれはまた草かるからな。」
「あいづやっぱり風の神だぞ。風の神の子っ子だぞ。あそごさ二人して巣食ってるんだぞ。」「あいつやっぱり・・・風の神様の子供だぞ。あそこに二人して・・・」
「そだなぃよ。」「そうじゃないよ。」
九月六日
「下(サガ)ったら葡萄蔓とりに行がなぃが。」「放課後・・・行かないか。」
「行ぐ行ぐ。又三郎も行がなぃが。」「行く行く。又三郎も行かないか。」
「わあい、あそご又三郎さ教えるやなぃじゃ。」「おい、あそこ又三郎に教えるんじゃないよ。」
「葡萄とりにおらも連でがなぃが。」「・・・僕も連れてってくれない?」
「わがなぃじゃ。うなどさ教えるやなぃじゃ。おら去年な新らしいどご目附だじゃ。」「だめだよ。お前なんかに教えるもんじゃないよ。俺は去年新しいところ見つけたんだよ。」
「わあ、又三郎、たばごの葉とるづど専売局にうんと叱られるぞ。わあ、又三郎何(ナ)してとった。」「おい、又三郎、・・・たばこの葉取ると・・・おい、又三郎どうして取った。」
「わあい。専売局でぁ、この葉一枚づつ数えで帖面さつけでるだ。おら知らなぃぞ。」「おい、専売局ではこの葉一枚づつ数えて帳簿につけてるんだ。・・・」
「あの家、一年生の小助の家だじゃい。」「・・・小助の家だぜ。」
「わあ又三郎、なんぼ知らなぃたってわがなぃんだじゃ。わあい、又三郎。もどの通りにしてまゆんだであ。」「おい又三郎、いくら知らないっていってもだめなんだぞ。・・・元のとおりにして弁償しろよな。」
「早くあべ。」「早く歩け。」
「ほう、おら知らなぃぞ。ありゃ、又三郎の置いた葉、あすごにあるじゃい。」「おおい、俺しらないぞ。あれ、又三郎の置いた葉、あそこにあるぞ。」
「こゞおれ見っ附だのだがらみんなあんまりとるやなぃぞ。」「ここ俺が見つけたんだからみんなあんまり取るんじゃないぞ。」
「さあ、この位持って戻らなぃが。」「さあ、これだけ持って帰らないか。」
「おら、もっと取ってぐじゃ。」「俺、もっと取っていくぞ。」
「わあい又三郎、まだひとさ水掛げだな。」「おおい、又三郎、また人に水かけたな。」
「わあい又三郎、うなそごで木ゆすったけぁなあ。」「おい又三郎、お前そこで木をゆすぶったからなあ。」
「うあい又三郎、汝(ウナ)などあ、世界になくてもいなあぃ。」「おい又三郎、お前なんかこの世になくてもいいんだぞ。」
「やあ耕助君、失敬したねえ。」「・・・失礼しました。」
「うあい、うあいだが、又三郎、うなみだぃな風など世界中になくてもいゝなあ、うわあい。」「おい、おいってば、又三郎、お前みたいな風なんか世界中になくてもいいぞ。おい。」
「うわい、又三郎風などあ世界中に無くてもいな、うわい。」「おい、又三郎、風なんか世界中になくてもいいぞ、おい」
「風が世界中に無くってもいゝってどう云うんだい。いゝと箇條をたてゝいってごらん。そら。」「・・・無くってもいいってどういうことなの? いいということを一つづつ言ってみて。ほら。」
「汝など悪戯(イタズラ)ばりさな、傘ぶっ壊(カ)したり。」「お前なんかいたずらばかりするぞ、傘壊したり。」
「それがら樹折ったり転覆(オッケア)したりさな。」「・・・ひっくり返したりするぞ。」
「家もぶっ壊さな。」「家も壊すぞ。」
「あかしも消さな。」「灯りも消すぞ。」
「シャップもとばさな。」「帽子も飛ばすぞ。」
「笠もとばさな。」「笠も飛ばすぞ。」
「それがら、うう、電信ばしらも倒さな。」「それから、うう、電柱も倒すぞ。」
「それがら屋根もとばさな。」「それから屋根も飛ばすぞ。」
「それだがら、うう、それだがらラムプも消さな。」「だから、うう、だから、ランプも消すぞ。」
「風車もぶっ壊さな。」「風車も壊すぞ。」
「第一お前のさっきからの数えようはあんまりおかしいや。うう、うう、でばかりいたんだろう。」「・・・数え上げ方はすごくおかしいよ。うう、うう、ってばかり言ってたじゃない。」
「さあそれでぁ行ぐべな。」「さあ、それじゃあ行こうな。」
九月七日
「又三郎、水泳(ア)びに行がなぃが。小さいやづど今ころみんな行ってるぞ。」「又三郎、泳ぎに行かないか。小さいやつと今頃みんな行ってるぞ。」
「わあ又三郎、何(ナ)してわらった。」「おい又三郎、どうして笑った。」
「うわあい。」「おい。」(引っ込みがつかなくなって出した声)
「石取りさなぃが。」「石取りしないか。」
おれそれでぁあの木の上がら落すがらな。俺それじゃああの木の上から落とすからな。
「おゝ、発破だぞ。知らないふりしてろ。石とりやめで早ぐみんな下流(シモ)ささがれ。」「・・・石取りやめてみんな下流へさがれ。」
「何だこの童(ワラス)ぁ、きたいなやづだな。」「何だこの子は、変なやつだな。」
「発破かけだら、雑魚(ザコ)撒かせ。」「発破かけたら、雑魚ばら撒こう。」
「あ、生洲、打壊(ブッコワ)すとこだぞ。」「あ、いけす壊してるぞ。」
「あ、あいづ、専売局だぞ。専売局だぞ。」「あ、あいつ・・・」
「又三郎、うなのとった煙草の葉めっけだんだぞ。うな、連れでぐさ来たぞ。」「又三郎、お前の取ったたばこの葉見つけたんだぞ。お前連れて行きに来たんだぞ。」
「みんな又三郎のごと囲んでろ、囲んでろ。」「みんな又三郎のこと・・・」
「お、おれ先に叫ぶから、みんなあとから一二三で叫ぶこだ。いいか。あんまり川を濁すなよ、いつでも先生(センセ)云うでなぃか。一、二ぃ、三。」「・・・一ニ三で叫びっこだ。・・・濁らすなよ、いつでも先生言うじゃないか。・・・」
九月八日
「ちゃんと一列にならべ。いいか、魚浮いて来たら泳いで行ってとれ。とった位与(ヤ)るぞ。いいか。」「・・・とっただけやるぞ。・・・」
「さっぱり魚、浮ばなぃな。」「・・・浮かんでこないな。」
「鬼っこしないか。」「鬼ごっこしないか。」
「又三郎、来(コ)。」「又三郎、来い。」
「いま叫んだのはおまえらだちかい。」「・・・お前らかい。」
「そでない、そでない。」「そうじゃない、そうじゃない。」
九月十二日
「あゝひで風だ。今日はたばこも粟もすっかりやらえる。」「ああひどい風だ。・・・やられる。」
「一郎、いまお汁(ツケ)できるから少し待ってだらよ。何(ナ)して今朝そったに早く学校へ行がなぃやなぃがべ。」「一郎、いま味噌汁できるから少し待ってたらいいよ。どうして今朝そんなに早く学校へ行かなきゃいけないんだい。」
「うん。又三郎は飛んでったがも知れなぃもや。」「・・・飛んでったかもしれないだもん。」
「又三郎って何だてや。鳥こだてが。」「又三郎って何のこと?鳥のことかい。」
「うん。又三郎って云うやづよ。」「うん、又三郎っていうやつよ。」
「いまごはんだべて行ぐがら。」「いまごはん食べて行くから。」
「嘉助、二人して水掃ぐべな。」「嘉助、二人で水掃こうな。」
「先生、又三郎今日来るのすか。」「・・・来るんですか。」
「先生飛んで行ったのすか。」「飛んで行ったんですか。」
「何して会社で呼ばったべす。」「どうして会社が呼んだんでしょう。」
「そうだなぃな。やっぱりあいづは風の又三郎だったな。」「そうじゃないぞ。やっぱりあいつは風の又三郎だったんだぞ。」
岩手県ご出身の皆さんへ。
ニュアンスなどについてご意見がありましたらどうぞお教えください。なるべく正確なものにしたいと思っております。
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