バラ色の日々 《2》
− I want a Future −


金曜日。俺は朝飯もそこそこに事務所に向かった。
事務所の女の子が、「今日は早いですね」って、俺に笑顔を向けた。
緊張していた俺の笑顔は、たぶん、ぎこちなかったと思う。
昼近くになって、ヒーセが来ると、直にエマとアニーも来た。
俺達4人は会議室にこもると、話し合いを始めた。


ロビン「どうするんだ?」
ヒーセ「いきなり本題かよ。まぁ、俺も色々と考えてみたんだけどよ、結局答え出なかったんだよ。で、エマとアニーがどう思ってんのか聞いて、それから決めようかと思ってよ。ロビンには悪いが、やっぱ、生死がかかってるからな」
ロビン「だよね・・・5日で答えなんて出せないよね・・・・」
アニー「ごめん。俺、やっぱり出来ないよ。俺一人だったら行けるけど、でも、親の事考えると・・・俺と兄貴、二人ともいなくなっちゃうって考えたら・・・」
ロビン「エマは?」
エ マ「俺? アニーに恨まれるかもしれないけど、俺はロビンについて行こうって決めた。色々考えたんだけど、俺の中で一番大事なものっていったらイエローモンキーなんだよ、やっぱ。それに、今まで俺がやりたいことやって来たかっていったら、俺がやりたいこと半分もやって来てないし。それに、このまま行ったらイエローモンキーは、いずれ近いうちに「解散」ってことになると思うよ。ロビンがそんな事考えちゃったのに実行出来なくかったら、こいつずっと尾を引くよ。そんな状態でバンドを続けて行こうとしたって続かないよ。だから、俺はロビンに賭けようって思った」
アニー「兄貴は、親を捨てるのかよ!」
エ マ「アニー、ごめんな。親父もお袋も大事だけど、イエローモンキーは俺にとって、それ以上に大事なんだよ」
アニー「ロビンが、じゃないの? 兄貴は、ロビンが言ったから賛成したんじゃないの? ロビンの方が親より大事なんだろ!」
ロビン「アニー、そんな事あるわけないだろ! エマだって、悩んで、決めた事なんだから・・・」
エ マ「いいよ、ロビン。アニー、確かにお前の言う通り、俺はロビンを選んだよ。でもそれは、ロビンって事だけじゃなくて、イエローモンキーの将来を考えて選んだことだから。だから、お前に何て言われても、俺の気持ちは変わらないから」
アニー「・・・・兄貴・・・」
ヒーセ「確かに、ここにいたって俺たちに将来は無いかもな。このままじゃ、いずれエマの言う通り「解散」って言葉が現実になりそうだしな」
アニー「ヒーセまで。残された家族はどうなってもいいの?」
ヒーセ「アニー、確かに家族も大事だけどよ、それに縛られて自分のしたいこと出来ないって事の方が、親にとっても辛いんじゃねーのか?自分たちの所為で子供の将来奪ったって事の方がさ」
ロビン「エマとヒーセは賛成してくれるんだね」
ヒーセ「ああ。俺はロビンについて行くぜ。でも、アニーが行かないって言ったらどうするんだ?3人で行くのか?」
ロビン「そうなったら中止。この話は忘れてくれ」
アニー「そうなの?」
ロビン「俺、ヒーセとアニーとエマがメンバーだったから、ここまでやって来れたんだよ。イエローモンキーは、この4人じゃなきゃ駄目なんだよ。だから、アニーが行かないって言ったら、止める。メンバーを交代するくらいだったら、解散するよ」
ヒーセ「そうか」

アニー「・・・ごめん。もう一日考えさせて」
そう言ってアニーは会議室を出て行った。


ヒーセ「アニーはやっぱり、行くって言わなかったな」
エ マ「しょうがないよ。あいつ、親の期待があったのに、俺につられて音楽の道選んじゃった事を、やっぱり、気にしててさ」
ヒーセ「本当、あいつ親の事とても大切にしてたからな。それにしても、まさか、エマが行くって言うとは思わなかったな」
エ マ「やりたい事、いっぱいあるんだよね。イエローモンキーで」
ロビン「もう、ここへは戻って来れないかもしれないんだよ? それでもいいの?」
エ マ「いいよ。俺は何処までもロビンについて行くよ」
ヒーセ「そうだな。後はロビンに任せた!って事でな。ところで、ちゃんとした計画なんだろうな。頼りなかったら俺、やめるぜ」
ロビン「大丈夫だって。任しといてよ。・・・・たぶん・・・」
ヒーセ「おい、本当に大丈夫かよ?」



明け方、電話が鳴った。
アニー「ごめん、こんな時間に」
ロビン「いいよ。それより、何?」
アニー「考えてたんだけど、俺・・・・皆と一緒に行くことに決めた。いろいろ考えたんだけど、ロビンが言ったことや、兄貴が言ったことや、ヒーセが言ったこと。それにイエローモンキーの事や、家族の事も。で、考えたんだけど、俺が一番何をしたいのかっていったら、やっぱり、イエローモンキーなんだよ。ロビンとヒーセと兄貴と、ずっとバンドを続けて行きたいんだよ。だから・・・俺・・・親を残して行くの辛いけど・・・・やっぱり、皆と一緒にイエローモンキー続けていきたいし・・・・だから・・・俺・・・行くことに決めた」
ロビン「ありがとう、アニー。ありがとう」
アニー「なんで、お前が泣くんだよ」
ロビン「そりゃ、アニーが泣いてるからだろ。それよりさ、そうと決まったら明日、中央公園に12時に集合」
アニー「何すんの?」
ロビン「ピクニックだよ。遅刻するなよ! それと、ちゃんとエマも連れて来てよ」

アニーの電話を切ると、俺はヒーセへと電話をかけた。
いよいよ計画が動き始めた。


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