バラ色の日々 《6》
− I want a Future −




俺達は館の奥の部屋にこもると外からは開かないよう、入口のドアに箪笥や書棚を積み上げた。

アニー「これだけ積んでおけば、外からは、なかなかドアを開けられないよね。できれば諦めて帰ってくれるといいんだけど」
ヒーセ「それはねーよ。ハイエナみたいな奴らだぜ。俺達を捕まえるか殺すかまで諦めなねーって」
アニー「分かってるよ。あーぁ、俺達ここで終わりなのかな」
ロビン「ごめん。俺の所為だよ。俺の我儘で皆を、巻き添いにしちゃって。俺があんなこと言わなきゃ、こんな目に合わずにすんだのに・・・」
ヒーセ「ロビンの所為じゃねーって」
ロビン「俺が馬鹿だったんだよ。亡命なんて簡単に出来ると思って・・皆の事・・・・・」
エ マ「もういいって! 俺は、自分で決めたんだよ。お前に強制されてここまで来た訳じゃないよ」
ロビン「でも・・・・」
エ マ「でも、じゃない! 誰もお前の所為だって言ってないだろ!」
ロビン「・・・・・」
ヒーセ「エマ、どうしたんだよ。さっきから、なにイライラしてんだよ」
エ マ「別に」
ヒーセ「計画が成功しなかったのは残念だけどよ、後悔はしてねーよ、俺は。ただ、やりたかったことが出来ねーうちに終わっちゃうのが、悔しいけどよ」
アニー「俺だって、ロビンの事怒ってないよ。だって、イエローモンキーの事一番大事に思ってるのはロビンなんだからさ。イエローモンキーを壊さないのにはどうしたらいいかって考えて、それで出した答えなんでしょ。俺もイエローモンキーが大事だから。それで俺自身でどうしたらいいかって考えて、それで決めたんだからさ」
ロビン「皆、ごめん・・・」


俺は窓の側に立って外を見ていた。
眼下に広がる、この森を抜けて新しい世界へ行くはずだったのに。
自由を手にするはずだったのに。

ふと、部屋に視線を戻すと、エマがいない。
隣の部屋に行くと、エマも窓の外を見ていた。
近づくと、エマが泣いている。
ロビン「エマ、どうしたの?」
俺は驚いて、振り向かせた。
ロビン「昨日からおかしいよ。俺が何かした? だったら謝るから」
エ マ「何でもないったら」
ロビン「何でもなくないよ。言ってよ」
エ マ「・・・・・・・」
ロビン「エマ・・俺、どうしたらいいの? 俺が苦しんでる時、エマがいつも助けてくれたのに。それなのに、今、エマが泣いてるのに、俺どうしてあげたらいいのか分かんない・・・こんなにエマのこと愛してるのに」
そう言って俺はエマをきつく抱きしめた。
エマがいつも隣にいてくれたから、ここまでやって来れたんだから。
エマがいてくれたから、どんなに怖くても平気だったんだから。
ロビン「愛してる・・・」
エ マ「ばか!」
ロビン「えっ?」
エ マ「お前がそのセリフ言ってくれるの、何年待ったと思ってんだよ」
ロビン「えっ!」
エ マ「昨日もそのこと言おうとしたんだろ?」
ロビン「だからあんなに?」
エ マ「ばか・・」
ロビン「ごめん」
エ マ「遅いよ、今頃になって「愛してる」なんて言ったって。・・・もっと早く・・・・」
ロビン「俺、怖くて言えなかった。「愛してる」って言った所為で、エマが離れて行っちゃうんじゃないかって・・・・だから怖くて・・・エマを失いたくなくって・・・・」
エ マ「何度も合図送っただろ」
ロビン「わかんないよ。俺、鈍いもん。ちゃんと言ってくれなくちゃ、わかんないよ」
エ マ「だって俺が先に「愛してる」って言ったらロビンが優位に立つだろ。それじゃ嫌で・・・だから、俺からは絶対に言わないって意地になって。なのにロビンは言ってくれないし。時間は無くなってくし。だからイライラして・・・」
ロビン「ばかだね、俺もエマも」
エ マ「ほんと、ばかだよ。しなくていい遠回りして」
ロビン「でも、やっと言えた・・・愛してるよ、エマ」
エ マ「俺も・・愛してるよ。ねぇ、キスしてもいい?」
そう言うとエマは、俺の首に手をまわしてきた。

ステージ以外での初めての、くちづけ。
失った時間を取り戻すような・・・・熱い・・・・くちづけ。

エ マ「ずっと俺の側にいて。もう俺の事離さないで」
ロビン「離さないよ。ずっとエマの隣にいるから」
俺は抱いていた手を離す前にもう一度、エマをきつく抱きしめた。

ロビン「二人の所に行こう」
俺達は隣の部屋に戻った。


ヒーセ「どうやら、奴らが近くまで来たらしいぜ」
ヒーセの隣に立って窓の外を見ると、館に向かって来る人影が3人。
どうやら、覚悟を決めなきゃいけないみたいだ。


ヒーセ「ロビン、エマ、アニー、ありがとうよ! お前らとバンドやってこれて楽しかったぜ!」
アニー「俺も。ロビン、ヒーセ、ありがとう。兄貴、手のかかる弟だっただろ、ごめん」
エ マ「俺こそ、出来の悪い兄貴でごめんな。ヒーセ、ロビン、一緒に音楽やってこれて、楽しかったよ。ありがとう」
ロビン「俺の我儘に、ここまで付き合ってくれて・・・ありがとう。皆とバンドが組めて、本当によかった」




気付くと、ドアの外に人の気配がする。
俺たちは、このままここで終わりなのか?

この国を出て、自由に音楽をやるんじゃなかったのか?

いやだ!!
このままここで終わりだなんて。
まだ、何も手にしてないじゃないか!

・・・いやだ!!!!!


END



月桂樹、大作ありがとうございました!
凄く文学的で、えままは好きだな。
彼らはここで終わっちゃうの?そ、そんなあ・・・
                   コメント by えまま


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