IC-7300用1800KHz/HPFの試作(Apr 8〜9. 2016)
はじめに
自宅に張ったエレメント長80mの1.8〜1.9MHz用アンテナ(地上高22m逆V状Winodm)の出力レベルは、ローカルAMラジオ局信号を+3〜-12dBm(50Ω終端)で捉える。一番強い+3dBmはJOPK/10KW(静岡市駿河区宮竹)である。自宅まで15Kmの距離でこのレベルだから、数Km圏内にあるJR静岡駅南側の状況は容易に想像できる。このような状況下で安定なLowバンド運用を裸のトランシーバに期待するのは難しい。
2016年2月に購入したトランシーバIC-7300は、大手メーカーとしては初の本格的SDR機であり、発売前より大いに興味をそそられた。実は2014年5月、友人がSDRトランシーバFLEX6500を自宅工房に持ち込み、K3他と聴き比べをしたことがある。その時、皆無に近い内部高調波歪みの印象があまりにも強くその再現を期待していた。ところが、IC-7300を扱ってみると、単体では内臓機能をどう駆使しても内部高調波歪みをクリアにすることが出来ない。受信単独のJP経路がないため、アンテナ同軸に送受共用HPFを挿入する対策が最もシンプルと考え、試作してみることにした。
以下はそのHPF試作の概要と結果をまとめたものである。

参 考
@どの程度の減衰量が必要か…
 先ずローカルの中波AMラジオ局(JOPK/880KHz、JOPB/639KHz、JOVR/1404KHz、其々10KW)の2倍の内部高調波を受信し、アンテナ入力へステップATTを挿入して、不感(ノイズに埋れる)となるATT量を確認する。
Af特曲線確認と定数決定…
 @のデータに従って、期待する特性(減衰)が得られるかSVC FilterソフトでシミュレーションしフィルタのLC定数を求める。
SVC Filterソフトでシミュレート
フリーソフトのSVC Filterを使って、1800KHzカットオフのHPFをシミュレートする。条件はカットオフ1800KHz、C入力、7素子CHBYCHEV型とした。
この結果…C1/C4:2200PF、C2/C3:1000PF、L1/L3:3.3μH、C2:2.7μH…とする。
送信時にHFP領域で100Wの電力が通過するので、コイルのコアはカーボニール、コンデンサはマイカを使用することにする。
639KHzで-70dB、880KHzで-47dB、1404KHzで-10dB程度の減衰が期待でき、一定の改善が期待できると思われる。

なお、RF Design(RFD)のWebSiteにも設計ツールが有るので試してみると面白い。

コイルを巻く
L1/L3は赤カーボニールトロイダルコアに24T、L2は黄カーボニールコアに24T巻くコア径20.4mm(外周)、線材は0.8mm/UEW。LCメータでインダクタンスを見ながらのカットアンドトライになる。黄コアが混じったのは赤コアの手持ちが無かったため。



コンデンサを決めアルミダイキャストボックスへ実装
2200PF/1KVのマイカが手元にありC1/C4はこれを利用。C2/C3は1000PFが入手できないため470PFx2個+66PF1個のマイカコンを並列接続した。 ケースはTAKACHのアルミダイキャストケースを利用。入出力にMコネクタを配し、Mコネクタ間を立体配線する。



特 性
微調整せず作りっ放しの特性です。左は10KHz〜5MHzまでのf特。下は10KHz〜60MHzまでのf特(画像をクリックすると拡大)。
下降カーブが1.8MHz帯にかかるのが嫌で、Lを極僅か多目に巻いたらカットオフ周波数が1600KHz辺りまで落ちてしまいました。 送信については1.9MHz帯からSWR=1でフルパワー送信が可能。挿入による悪影響は感じません。
肝心の受信は、通過ロス0.2dB以下/1.81MHzで@882KHzが-48dB、A639KHzが-69dB、B1404KHzが-14dB程度、まで落ちています。一番強力だった882KHzの2倍1764KHz(S9+35dB)の内部高調波が不感(ノイズ)になります。
アマチュアバンドには送受共に影響を及ぼさず、中波AMラジオ局からの影響から逃れることができた模様です。
最終的にはカットオフ周波数を限りなく1.8MHzに近付ける予定です。
*ネットワークアナライザ:E1500B/Agilent



最終調整・まとめ
Cの容量調整は困難に近いため、トロイダルコイルの巻き数を2Tずつ減じることでカットオフ周波数の上昇を図った。
狙いは見事的中して画像の如き特性を得ることができた。作りっ放しの状態より大分改善が見られる。
下の画像はマーカーリストを入れてみたもので、通過ロス0.2dB以下/1.81MHzで@882KHzが-53dB、A639KH+zが-72dB、B1404KHzが−21dBまで落ちている。
本フィルタは、中波AMラジオ放送の強電界による内部歪みにお悩みのローバンドDX'erに特に有効と思われます。内臓ATTでは太刀打ちできない地域では劇的な効果をもたらすと思われます。特別な部品は使用していないので簡単に製作可能です。また送受信共用なのでフィルタを意識させません。お試しください。