トランシーバーのスタンバイリレー接点の溶解対策

トランシーバーのリレー接点出力がくっついてしまい、にっちもさっちも行かなくなった経験はありませんか?。・・・ここはその対策の話しです。
特に、アンプ側に電圧の高リレーを使っている場合は顕著で、小型リレーを使ったトランシーバーで駆動すると、スタンバイの度に溶解が進み最後はくっついてしまいます。
アンプ側で、リレーコイルの自己誘導で発生するスパイク電圧は、並列につながれたダイオードで吸収されますが、古い物にはダイオードが取り付けてない物もあります。
また、スタンバイラインに挿入されたバイパスコンデンサ(0.001μ〜0.01μF程度でしょうか)は、リレー電源で何時もチャージされています。
この電圧を、スタンバイの度に小型リレーが短絡する事になり、火花が散り接点にダメージを与え続けます。
TL-922を駆動した経験では、IC-750A・IC-736・IC-756(icomファンです)で必ず発生します。また自作の12Vリレー電源を使用したアンプでも同様でした。但しTL-922の場合はリレー電源のトランスに80Vを使っており、条件としては非常に厳しいと言えます。
当局では、この対策のために以下の処置をしております。

@トランシーバ〜リニアアンプ間にトランジスタによるドライブ回路を入れる・・・小電力で駆動できるようにする。
Aドライブ回路の駆動はトランシーバのスタンバイ電圧(SEND端子/送信時GNDレベル)で直に行う・・・リレー接点は使わない、スタンバイ電圧はアクセサリコネクタ(ACC)よりとる、リレーを1段省いた分アンプの切り替え時間が改善される。CWのキーイングでは短点時間が容易に50ms以下になる。OMRON/LY型では最大25msの遅延があり、これらを外部リレーとして挿入すると頭切れが発生する可能性がある。
Bドライブ回路は出来ればフォトカプラで結合する・・・アンプのリレー電圧が高い場合(エキサイターのスタンバイ電圧に対し)に逆流を押さえる意味で有効です。また、グランド系が絶縁される(フォトカプラの残留容量は残ります)ため、スタンバイ回路によるグランドループが発生しない(コモンモードチョークを入れた効果が期待できる)。

・・・以上の対策で、長年の悩みから開放されます。なおこの方法はトランシーバーやリニアアンプの中には手を加えず、付加装置として実現できますので設備が変わっても流用できます。
なお@のドライブ回路は、fig1の様にトランジスタ2石(石とは古い!)によるダーリントン回路を使ってます。これはアンプのリレー電圧がDC12V程度の例です。

写真は組み上げたリレーアンプで、接続ケーブルを直に出していますが、ダイオードはアンプ側に依存しています。これを小型ケースに入れるか、自己融着テープで巻き込みます。
これだけの細工で、最大リレー2個分のカスケード動作による遅延から逃れる事が出来ます。

近年はスイッチング電源用に開発されたパワーMOS-FETが劇的な価格で入手できるようになりました。FETは電圧(電荷)制御素子なので更に簡単に回路を組むことが出来ます。fig2にその参考例を記しています。FETはエンハンスメント型(ゼロバイアス時D-S間OFF)を使用し、Vth(スレッショルド電圧)を超える電圧をG-S間に掛けることでFETがON状態になります。FETの2SK2847は900V/85Wでこの用途には有り余るものですが、価格は僅か\200程度で入手が可能です。更に小電力のFETなら\100程度で入手が出来るでしょう。fig2では入力が受信時=GNDレベル、送信時に+VCCレベルを前提に記述してありますので、上記fig1の場合と論理が逆になっていますのでご注意下さい。電圧渡し制御出力のあるエキサイターには最適でしょう。
リニアアンプのリレー電圧はメーカーにより様々ですが、TL-922等80V以上あるDC回路のON/OFFにはこうしたパワーMOS-FETが最適と言えます。トランシーバの接点出力に依存するリニアアンプのスタンバイ方法は、接点の劣化・遅延時間の増等の問題を招きますので最初からこうしたドライブ方法を導入のがベターです。
なおパワーMOS-FETは入力静電容量が2000PFを超える物があり、立ち上がり特性が心配の向きにはR1/R2の値を相対的に下げるなどの対策が考えられる。
fig3はフォトカップラ(フォトトランジスタ)を使用した例である。この場合、負荷駆動側デバイスはTrであるが、これ以外にサイリスタや感度を上げたダーリントンTr型などがあり、目的に合せた選択が出来る。フォトカプラ最大の利点はエキサイタ側とアンプ側のグランドラインの分離が可能なためコモンモード輻射に効果がある。また駆動側LEDは浮かした使用が出来るので電源(エキサイタ)の方向性に自由度がある。したがってアンプリレーの駆動方法としては現状のデバイスの中では最良と言える。
fig4はfig3の出力に高耐圧のTrを入れ更に高耐圧・高電力のドライブに備えたもの。