■ 材料考察 ■



KIJIMA建築工房の家づくりで、特に理由があって、理由があるからこそですが、こだわりを持って使用している材料や製品があります。参考までに、そのいくつかを簡単にご紹介したいと思います。



【材木


木造の住まいにおいて最も要となる材木、これは迷わず国産材をお薦めします。土台、柱、梁、棟木、母屋、垂木などの構造材、床や壁などの内装あるいは外装などの仕上、特別な理由が無い限り全て国産材を選択します。

<理由その1> 耐久性・美感性に優れている。特殊な木もありますが、一般材であれば外材より遥かに安心でそれは歴史も証明しています。

<理由その2> 信頼のおける仕入れ先(山、林業地、製材所等)を選択することで、より良質の材が適正コストで入手出来る。例えば、同じ寸法の同じ樹種の同じ等級の4寸角柱であっても価格は異なり、その異なりには意味があります。

<理由その3> 国産材を使うことは日本の環境保全に繋がる。誤解されることがありますが、世界全般の森林状況とは違い、日本の山は植林して育てた木が適齢伐期を迎えており、木を伐ることが森林の環境保全に直接的に繋がり、それは子供や孫の世代へ豊かな自然資源を残すことでもあり、逆に伐らないことが森林の荒廃の原因になっています。

<理由その4> その地の環境で育った木をその地で使うことは、木にとってもストレスがなく、あらゆる意味で自然で無理がないものと思います。気持ちの問題かも知れませんが・・。



又、国産材を使う上で注意しておきたいのは「木の乾燥」です。特に家の耐久性・耐震性に大きく関わる構造材に関しては、含水率何%以下という数値以上に「乾燥方法」に注意を払っています。理想は自然の陽と風による天然乾燥と考えますが、その方法が取れなければ人工乾燥に頼ります。

通常、人工乾燥といえば
高温乾燥で指定の含水率に仕上がった製品が流通されています。含水率という数値だけで見れば何の問題もありませんが、高温乾燥の特徴として、高温で無理に短時間で木の水分を放出させるがために、木の繊維が剪断され内部割れを起こす、木の香りが無くなり焦げ臭くなる、自然な木肌の色艶が失われる、といったことがあり、これではせっかくの木の良さが無くなり、木を使う意味も半減してしまうのではないかと思います。

KIJIMA建築工房では、上記の理由により高温乾燥ではなく
中温乾燥の方法で人工乾燥を施している飯能市にある製材所と打ち合わせを行い、そこで生産される材木を指定して使うようにしています。中温乾燥では、低い温度で日数をかけてゆっくり乾燥を掛けるので、高温乾燥ほどの機械的な強引さはなく、天然乾燥に近い状態が得られます。

短所としては、極端に含水率を下げることは出来ないので、木の細胞の収縮や動きから表面のヒビ割れや変形が起きやすいということがあります。が、それは天然乾燥の木と同様のことであり、その短所以上に、木の粘り強さ、木の香り、木の色艶など、木が持つ自然の特性が生かされるという長所があり、それもまた天然乾燥の木と同様です。








【断熱材


木造建物における
断熱材の選び方・使い方は難しいものです。断熱性を考えるとき(地域は東京埼玉近郊とします)、単に断熱材の種類や性能だけを見るのではなく、建物全体の機能性、気密性、施工性、通気性、耐久性、耐火性、費用などを一緒に組み合わせて検討しなければなりません。
計算上では、どんな断熱材を使おうと仕様に適した厚さを確保すればどれも同じ性能を得られることにはなりますが、工場で飛行機や潜水艦を造るのとは訳が違い、木造の現場、木造の造りにおいては計算通りにならない部分も考えられます。

木造であるということは、構造材や下地材に木を使う大前提があります。木は湿気に対して膨張したり収縮したり動きが出ます。木の特性、湿気(水蒸気)の動きや逃げを考慮した造りと合わせた断熱材の選定が大切です。

条件や考え方により何が絶対とは一概には言えませんが、KIJIMA建築工房では、
屋根・床下においては発泡プラスチック系ボード断熱材を選択するケースが多いです。凹凸や開口の無い、単純で連続した広い平面部分においては、断熱性能の高い発泡プラスチック系ボード断熱材の特性を上手く生かせるものと思います。
又、
壁内部においては、羊毛&ポリエステル繊維の充填断熱材を選択するのがお薦めと考えます。これは断熱材そのものに調湿機能があり防湿シートを必要としないので、木の特性も活かせる断熱材と思います。

屋根・床下における発泡プラスチック系ボード断熱材壁内部における羊毛&ポリエステル繊維の充填断熱材、どちらも施工性は良く施工品質の確保が容易ということも大切なポイントです。価格的には断熱材の製品の中では、特に安くもなく高くもなく、中程度といったところでしょうか。又どちらの断熱材でも建築的な納まりとして、通気・水蒸気の逃げ場を確保しておきます。

気密シートを施した高気密仕様と言えども、木造である限り隙間は生じるものだと思います。竣工時あるいは10年程度なら気密の状態を保てるかも知れませんが、30年後50年後となるとどうでしょうか?気密シートの上に張られた石膏ボード留め付けによるビス穴、気密シートのジョイント部、配線配管の貫通部、あるいは施工が確実ではなかった箇所など、確実に気密が保たれているでしょうか?又、想定では無かったはずの結露や雨漏りが万一あった場合(あってはならない事ですが考えておかなければならない事だと思います)今度は気密シートがあるがために内部に溜まった水や水蒸気の排出・乾燥は悪く、かえってカビや腐れを発生させる悪影響が考えられるのではないかと思います。そのようなことから、気密シートに頼らない断熱方法をと考えています。






【手漉き和紙


2014年、日本の和紙(埼玉県/細川紙、岐阜県/本美濃紙、島根県/石州半紙)がユネスコの無形文化遺産に登録されました。埼玉県細川紙の産地は小川町と東秩父村で、寄居町はそのどちらにも隣接し、手漉き和紙を入手しやすい環境にあります。手漉き和紙は普段あまり馴染みは無いかも知れませんが、壁、天井、建具などの内装仕上げに利用することも出来ます。

元々手漉き和紙を利用してみようと思った経緯は、1990年代、内装材、接着剤、糊などホルムアルデヒド等の化学物質の問題性が発覚していったことから、自然素材である手漉き和紙にあらためて注目しました。そこでまずは試しに、KIJIMA建築工房の一室において、壁天井の仕上げに手漉き和紙を貼ってみました。1996年のことです。

使用した手漉き和紙は、小川町にある和紙工房に注文したもので1枚のサイズは2尺×3尺、原料は楮、価格は当時1枚500円。糊は、自前で小麦粉を水で溶いて煮立たせてつくったもの。下地は石膏ボード(ジョイント部やビス頭の処理は何も無し)。貼る道具は、糊刷毛、水刷毛、撫で刷毛、カッター、定規を一式揃え、特に知識も技術もないまま見よう見まねで自分で貼ってみました。




実際貼ってみた感じですが・・・
*きっちり整った紙ではなく、一枚一枚手漉きならではの微妙に違いのある和紙なので、素人が扱ってもそれはそれなりに豊かな表情として仕上がる。
*和紙の材料も糊の材料も100%自然素材であり、防腐剤などが入っていないことでカビの心配をしたが、結果として全くカビは出なかった。
*手漉き和紙は木の繊維同士が複雑に絡み合って出来ているので、想像以上に強度があって強く、木と同様に調湿効果も持ち合わせていることがわかる。
*作業の扱いとしては、紙であるのでハサミやカッターで簡単に切れ、糊は小麦粉なので、例え子供でも簡単に安心して扱うことが出来る。
*和紙自体の耐久性、糊の粘着力の耐久性、汚れなどの経年変化(今現在19年経過)は、全く問題なく当時のままの状態を保っている。

短所として考えられるのは・・・
*火には弱い
*水については多少濡れても支障は無い、水に強くはないが弱くもない

このような特性を知り得たうえで、今現在で7件の住宅の内装仕上げに手漉き和紙を利用した実例があります。






【壁紙


*準備中



   



【しっくい


*準備中