1.書き方に関する問題

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(正)(許)(△)(誤)のしるしの基準

(正)

規範的、標準的、一般的な形   国語表記の本則

(許)

現代仮名遣い・送り仮名の付け方など、国語表記の許容

(△)

やや一般的でない形  やや適切でない形

(誤)

表記・用法上の間違い

 

(い)

(17)(正)いえど(雖)も /(△)言えども

(△)相手は前年の覇者(はしゃ)言えども(おく)することはない。力いっぱいぶつかっていけ。

(コメント:「いえども」は「雖」の訓として漢文訓読から出た語。「…と雖も(=…とはいうものの。たとえ…でも)」の形で使われる。例、「当たらずと雖も遠からず」。しかし、この字は常用漢字表にないため、「いえども」と仮名で書かれることも多い。)

 

(18)(正)依怙地(いこじ)(正)意固地

(正)彼は意固地な男だから、少しでも気にくわない点があると、なかなかうんと言わないと思うよ。

(コメント:「依怙地(いこじ。えこじ)(=意地を張って、つまらぬことに頑固になるさま)」が本来の表記。しかし、「怙」は常用漢字表にない字。新聞では、「いこじ」は「意固地」と書き、「えこじ」「えこひいき」は仮名書きにしている。)

 

(19)(正)(いさぎよ)く /(誤)潔よく

(誤)王手飛車取り。どうだ。この辺で潔よく負けを認めたまえ。

(コメント:送り仮名の付け方について。「潔く」が正しい。形容詞「いさぎよい」は、活用語尾「い」だけを送る。同じ形容詞でも、語幹が「し」で終わる形容詞は、「し」から送る。例、「著(いちじる)しい」「恋しい」。なお、「いさぎ良い」という表記、「いさぎいい」という読み方は誤り。また、「いさぎ悪い」という言葉はない。)

 

(20)(正)痛みに耐(た)える /(誤)痛みに絶える

(誤)患者は痛みに絶えられず、しきりにうめき声をあげた。

(コメント:「痛みに耐えられず」が正しい。なお、「耐え難い痛み」も、「絶え難い痛み」と書くと誤りである。)

 

(21)(正)一応いちおう(△)一往

(△)この度の企画募集では一往の成果が認められた。

(コメント:「いちおう(=完全とは言えないが、一とおり。ひとまず)」は、「一往」が本来の表記である。しかし、現在では、「一応」(わが国における当て字)のほうが優勢。)

 

(22)(正)一分(いちぶ)のすき(隙)もない /(誤)一部のすきもない

(誤)横綱は一部のすきもない取り口で関脇(せきわけ)を一蹴(いっしゅう)した。

(コメント:「一分のすき(隙)もない」が正しい。「いちぶ」は、「全体の中のある部分」の「一部」ではなく、「ごくわずかなこと」の意の「一分」である。「一分のすきも見せない」という言い方もある。)

 

(23)(正)一陽来復(いちようらいふく)(誤)一陽来福

(誤)ここ数年低迷を続けた我々の業界にも、ようやく一陽来福の兆(きざ)しが見えはじめた。

(コメント:「一陽来復」が正しい。「一陽来復」は、中国古代の易(えき)で、陽の気が「復(かえ)る」意。陰暦十月に陰の気が極まり、十一月の冬至(とうじ)になって陽の気が兆しはじめ、しだいに春に向かってゆくことをいう。よくない事の続いた後によい事が巡ってくることにもいう。)

 

(24)(正)(い)づ /(△)出ず

(△)翌日の新聞には、「大記録出ず」の見出しがでかでかと出た。

(コメント:現代仮名遣いによる表記「出ず」は、「でず」と読めば「出ない」こと、「いず」と読めば「出る」ことになって紛らわしい。冒頭例の場合は、「大記録出(い)づ」と、「ず」を文語の表記「づ」にしたほうが、「出(で)ず」と誤解されずわかりやすい。)

 

(25)(正)一生懸命(いっしょうけんめい)(正)一所懸命(いっしょけんめい)

(正)彼は店の再建に一所懸命になっている。

(コメント:「一生懸命(=生死をかけるような差し迫った事態。命懸けで事に当たるさま)」は、「一所懸命(=中世、(武士が)一か所の所領を命懸けで守り生活の頼みとしたこと)」から転じた語。現在は「一生懸命」が一般的。)

 

(26)(正)一心同体(いっしんどうたい) (誤)一身同体

(誤)村人たちは一身同体となって、はびこる悪弊(あくへい)を一掃すべく立ち上がった。

(コメント:「一心同体」が正しい。意味は「心を一つにし、体を同じくすること。別々の者が、心も体も一つのように固く結び付いていること」。)

 

(27)(正)一炊(いっすい)の夢 /(誤)一睡の夢

(誤)秀吉(ひでよし)によって成し遂げられた豊臣(とよとみ)の天下も一睡の夢にすぎなかった。

(コメント:「一炊の夢」が正しい。この世の栄枯盛衰(えいこせいすい)、人生の栄華(えいがのはかないことのたとえ。「一炊」は「一度飯をたくこと」の意で、そのようなごく短い間に、盧生(ろせい)という若者が、眠りこんだ夢の中で最高の富や地位を得たという中国唐代の伝奇小説「枕中記(ちんちゅうき)」の話から出た言葉。なお、「明智光秀あけちみつひで)の天下取りも一睡のうちの出来事に終わった」のような言い方であれば「一睡」でよい。)

 

(28)(正)一朝一夕(いっちょういっせき)(誤)一鳥一石

(誤)何事も一鳥一石には達成できないものだ。

(コメント:「一朝一夕」が正しい。「(ひと朝とひと晩の意から)期間が非常に短いこと」をいう。「一鳥一石」は、「一石二鳥(いっせきにちょう)(=一つの石を投げて二羽の鳥をうち落とす意から、一つのことをして二つの利益を得ること)」との紛れによる誤りか。)

 

(29)(正)一天(いってん)にわ(俄)かにか(掻)き曇(くも)り /(誤)一転にわかにかき曇り

(誤)運動会の最中、一転にわかにかき曇り、大粒の雨が降りだした。

(コメント:「一天にわ(俄)かにか(掻)き曇り」が正しい。「一天」は「空全体。空一面」のこと。なお、「一天にわかに晴れ上がり…」という言い方はしない。)

 

(30)(正)一頭地(いっとうち)を抜く /(誤)一等地を抜く

(誤)彼は小学生のころから、何をやらせてもクラスで一等地を抜いていた。

(コメント:「一頭地を抜いていた」が正しい。「一頭地を抜く」は、「(他の者より頭一つ抜きんでるの意から)他の者よりいちだんと優れているさま」をいう。なお、「地」は漢文の助字ではっきりとした意味はなく、「一頭地 を抜く」と読む。)

 

(31)(正)いなずま(稲妻) /(許)いなづま

(許)一天にわかにかき曇り、いなづま(稲妻)が走った。

(コメント:仮名遣いについて。「いなずま(稲妻)」が本則。「稲妻」は、もと「稲の夫つま」の意で、古代の信仰では、雷と稲とが結合して稲が穂をはらむと信じられていたところから名付けられた語である。)

 

(32)(正)衣鉢(いはつ)を継ぐ /(誤)遺髪を継ぐ

(誤)一刀彫(いっとうぼり)を習い始めてから三十五年、五十五歳にして彼は師の遺髪を継いだ

(コメント:「衣鉢を継いだ」が正しい。仏教(禅宗)では、師が弟子に法統を伝える際、袈裟(けさ)と鉄鉢(てっぱつ)を与えた。このことから、その道の奥義(おうぎ)を師が弟子に授けることを、「衣鉢を伝える」と言うようになった。「衣鉢を継ぐ」は、奥義を授かる側の言い方である。なお、「遺鉢を継ぐ」という誤記も見られる。)

 

(33)(正)いま(未)だに /(誤)今だに

(誤)少年のころ林間学校で出会った少女のことが今だに忘れられない。

(コメント:「いま(未)だに」が正しい。ただし、常用漢字表の「未」には、字音「ミ」しか掲げられていない。国語辞典の中には「今だに」を併記するものもあるが、使わないほうが無難である。)

 

(34)(正)いまわの際(きわ)(△)今はの際

(△)「ありがとう」という今はの際の母の言葉が、のこされた家族の者の胸を打った。

(コメント:現代仮名遣いでは、「イマワ」は一語としての意識が強いと考えられるので、「いまわの際(=死ぬまぎわ)」を標準とする。なお、「すわ一大事」「来るわ来るわ」「きれいだわ」などの「わ」は、「は」と書くと誤り。)

 

(35)(正)いや(弥)が上にも /(誤)嫌が上にも

(誤)多数の若い女性が応援に駆けつけ、選手たちの士気は嫌が上にも高まった。

(コメント:「いや(弥)が上にも(=あるが上にますます。なお、いっそう)」が正しい。「弥」は常用漢字表にない字。なお、「嫌が上にも」と書き、「数学は苦手だが、受験のためには嫌が上にも勉強しなければならない」など、「嫌だとは思うけれども」の意で用いるのも誤り。)

 

(36)(正)いや(否)でも応(おう)でも /(誤)嫌でも応でも

(誤)戦前の我が国では、ふつう男子は一定の年齢に達すると、嫌でも応でも徴兵検査を受けねばならなかった。

(コメント:「いや(否)でも応でも(=不承知、承知にかかわらず。どうしても。何がなんでも)」が正しい。「いや(否)が応でも」ともいう。なお、常用漢字表の「否」の音訓欄には「ヒ いな」とあり、「いや」の読みは掲げられていない。)

 

(37)(正)違和感(いわかん) (誤)異和感

(誤)赴任した当初は何かと異和感を覚えることもあったが、今ではこの土地の人になりきってしまった。

(コメント:「違和感」が正しい。意味は「体のどこかがなんとなく普通ではなく感じること。周りのものとの関係がちぐはぐで、しっくりしない感じ」をいう。単に「いわ」の場合も「違和」と書く。)